九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  【連載】山出淳也 アート、まちに出る 23

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 23

Thumb micro 6f691dcb2f
山出淳也
2021/02/23
LINE はてなブックマーク facebook Twitter


時には、ものすごいスケールで考える

 芸術祭の開催を目指し、様々なことを行った。

 小さなイベントをたくさん経験した。活動の拠点である「プラットフォーム」を会場に、いろいろな講演会やワークショップを開催した。応援してくれる地域の方や全国のアート関係者も増えてきた。僕たちは、学生にも興味を持ってもらいたくて、2008年7月、カイさんとともに別府市内の短大に向かった。

 大阪で活動するカイさんは、市民の目線で日常を記録することが社会的に大切だと考えていた。彼は阪神大震災を経験した際の喪失感や、ねじ曲げられた情報の怖さを感じていた。当時は、今のようにスマホで気軽に撮影や編集することは一般的ではなかった。そのため彼らは、一般市民に向けてビデオカメラの撮影や編集の仕方を教えていた。

 カイさんは学生たちに10分ほどの映像を見せながら話をしてくれた。それは「Powers of Ten」という、デザイナーで映像作家でもあるチャールズ・イームズとその妻レイによって作られた教育映画だ。

 どこかの国の長閑(のどか)な公園。ピクニック中の男女の姿から始まる。真上から捉えた正方形に区切られた映像。徐々にカメラは上空へと上がり、大気圏を、太陽系を、銀河系を超え、やがて宇宙の果てまで後退する。その後カメラは逆方向に動き始め、人の内側まで進みミクロの世界へ突入する。そんな映像だ。

 カメラの位置は変わっても、見ている方向は変わらない。見える範囲が異なっているだけだ。宇宙の果てから見える風景も、僕らを形作っている素粒子も映像では大して違わない。そんなことを感じさせてくれる。

 カイさんは学生たちに目の前のことを見ることの大切さを説いた。そして同時に、離れて物事を見ることの意味も伝えた。

 「時には、ものすごく大きなスケールで考えてみよう。宇宙は広く、知らないことがたくさんある。自分の悩みはちっぽけだ、大したことないと感じられるかもしれない。神のような視点もミクロの世界もつながっている。君たちはその一部なんだ」(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(12月3日付西日本新聞朝刊に掲載)=

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 5b7f61eb8b
終了間近

BASE GALLERY HAKATA
⻄川勝人個展「ノクターン」

2025/03/28(金) 〜 2025/05/20(火)
BASE GALLERY HAKATA

Thumb mini 8f4137e089
終了間近

The ma.macaron Cat Hotel

2025/05/03(土) 〜 2025/05/20(火)
合同会社書肆吾輩堂

Thumb mini 2fac2ea3db

福岡ミュージアムウィーク2025
初めてのベビーカーツアー

2025/05/21(水) 〜 2025/05/22(木)
福岡市美術館 コレクション展示室

Thumb mini 12f2a7f709

第35回九州産業⼤学美術館所蔵品+展 「巴里、ルオー、ザッキン。」 + 「元倉眞琴 集まって住む」関連イベント
アート・トーク「建築がもたらす共同体と孤独」

2025/05/24(土)
九州産業大学15号館102教室

Thumb mini 9ba6134a20

福岡ミュージアムウィーク2025
建築ツアー

2025/05/24(土)
福岡市美術館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 301a0fee81
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 22

Thumb mini 37587ad886
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 21

Thumb mini 4af966da35
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 20

Thumb mini 3e7f03bfeb
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 19

Thumb mini 51c0c995bf
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 18

特集記事をもっと見る