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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 18

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藤浩志
2017/10/31
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ツールとしての作品

  いろいろな現場と関わり、これまで知らないことを経験することで、予想もしなかったことが起こり、見えなかったものごとが見えはじめる。縁のなかった人との関係が深まり、新しい出会いが次の活動を導く。美術という権威的なものには懐疑的だが、何かをつくり、様々な現場で経験を重ねることには魅力を感じる。中学までは下敷きサイズの画用紙にアニメのキャラクターを描くことぐらいしかできなかったが、随分といろいろできるようになった。
 大学時代は演劇に没頭し大道具や小道具、照明や音響設備まで作っていたので、何でも作ることには自信がある。劇団を引退した後、友人と「京都情報社」という団体を作り、まちに何かを仕掛けようと話し合った。
 空間に何かを設置するには所有者や管理者の許可が必要で、いろいろ大変だということを経験したので、身に着けて持ち歩ければいいと思いつく。そこで友人が「昔からゴジラの着ぐるみが作りたかったんだ」と語り出した。別の友人が「ゴジラならモスラ対ゴジラのゴジラだな」と乗ってくる。僕はゴジラに詳しくないが面白そう。ちょうどその頃、後輩が大型ごみ置き場でウレタン(スポンジ)マットレスを拾ってきて家にあったので、そのウレタンが素材として使えるかもしれないと考えた。
 僕は自分の使い古した作業服を、ファスナーが後ろに来るように前後逆さまに着て、部屋の真ん中に立っている。ゴジラに詳しい吉川君と藤田君がマットレスをハサミで適当なサイズに切り刻みながら、ゴム用の接着剤で作業服に接着してゆく。粘土の代わりにスポンジを適当な大きさや形に切りながら貼り付けてゴジラを造形する。僕は立っているだけ。頭は発泡スチロールを削り、目はガチャ玉の透明な半円状のプラスチックに内側からリアルな眼球をペイントし、最終的にラテックスというゴム状に伸びる塗料で塗装して、かなりいい感じのゴジラの着ぐるみが完成する。(美術家。挿絵も筆者)=7月25日西日本新聞朝刊に掲載=

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