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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 45

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藤浩志
2018/01/11
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東京脱出

 僕は東京そのものに興味があったわけではなく、取り壊しになる家がたくさんあったからという不純な理由で東京に暮らし始めた。仕事は不思議と苦にならず楽しかったがバブルも崩壊し、仕事が窮屈になった頃から東京脱出を考え始めた。しかし、東京は住み始めるエネルギーよりもはるかに脱出する方がエネルギーが必要になる。そこを離れるきっかけが欲しかった。
 勤めていた都市計画事務所はバブル崩壊とともに仕事が減りつつあったので、週休4日の契約社員にしてもらった。収入減を補うために朝5時から11時まで築地の魚市場でバイトを始め、お昼から都市計画事務所に通うという生活を続ける。そんな時に青山スパイラルガーデンでの企画を実現することになった。
 1000万の資金で11月に始まる青山スパイラルガーデンの展示物を制作しなければならない。資金が用意されているというのはとても心強かったが制作費は出るものの僕の生活費は出ない。お米のかえるや蓮(はす)の葉を2048セットつくったり、取材依頼してインタビューしたり映像の編集をしたり、諸々(もろもろ)の作業が押し寄せてくる。6月から本格的な制作に入るために都市計画事務所は5月末に辞めたが、築地でのバイトは続けることにした。以前勤めていた開発業者が所有する廃虚のような3階建のビルの2階を作業場として使わせてもらっていたが、幸い銀行が差し押さえするまでは使えるとのこと。なんだかやばそうだがありがたい。会社を辞めると肩書がなくなるなぁと思い、自分の名刺を作ることにする。何か所属する屋号があったほうがいいのかなと軽い気持ちだった。
 6月6日、藤浩志企画制作室勤務という肩書を持つことに決めた。藤浩志という自分自身を企画し、制作する部屋かなと思って付けたけど、相手によって企画内容が自由に変化する感じで結局は便利だった。その後6月6日がかえるの日に認定されるとは。運命だったのかもしれない。(美術家。挿絵も筆者)=2017年8月31日西日本新聞朝刊に掲載=

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