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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 47

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藤浩志
2018/01/16
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鹿児島8・6水害​​

 鹿児島市内を東西に横切る甲突川。その南北を繋(つな)ぐように江戸時代に作られた武之橋という石組みでできた5連の眼鏡橋があった。鹿児島市内を走る路面電車に乗って事務所のあるイイスペイスに戻る途中、天文館という繁華街からその武之橋に向かう手前、高見馬場という停留所に差し掛かるあたりで大雨のためか、武骨さが美しい鉄製の電車が動かなくなった。
 「少々お待ちください」との車掌のアナウンス。雨はますます酷(ひど)くなり停車状態が続いた。外はバケツをひっくり返したような大雨。電車の中なので濡(ぬ)れなくてよかったと思う。しかし、なかなか動かない。かれこれ1時間ぐらい電車に閉じ込められている状態になってきた。既に電車の中は熱気で窓ガラスが曇り、大雨もあって外の様子が見えにくい。車掌のアナウンスの声が尋常でなくなってきた頃、突然「電車から降りて避難してください」との指示があり、それまで閉じていた扉が開き、街が冠水していることを知る。
 携帯電話もスマートフォンもSNSもない時代だったので何が何やらわからない。とにかく避難せねばと電車から降りようとするが、街はプール状態。電車を降りると、腰の上まで水がくる。水の中を歩き始めて、初めて自分が災害に遭遇している状態だと理解し始める。冠水して動けなくなった車があちこちに放置され、大きな企業のビルの入り口では人々が途方に暮れている。その姿を目にしながら深いところでは胸までつかり、武之橋に向かう。武之橋を渡るとすぐイイスペイスはある。
 武之橋を渡ろうとしたが危険なので渡れないという。甲突川に近づいてみると水位はもう既に橋を飲み込むばかりに上昇している。下流の天保山橋までゆき、ぐるっと遠回りして事務所に戻った。テレビをつけると甲突川が氾濫し鹿児島市内が冠水しているとの情報。その直後、武之橋が流失したとの報道をみる。1993年8月6日、150年活きてきた石橋が崩壊した瞬間だった。(美術家。挿絵も筆者)=2017年9月4日西日本新聞朝刊に掲載=

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