九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  コラム ›  特別展「奈良 中宮寺の国宝」珠玉の品 作品連載<1> 間人皇后像(江戸時代、中宮寺) 

特別展「奈良 中宮寺の国宝」珠玉の品 作品連載<1> 間人皇后像(江戸時代、中宮寺) 

2021/02/27 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 九州国立博物館(太宰府市)で開催中の特別展「奈良 中宮寺の国宝」の見どころを同館の小泉惠英(よしひで)・学芸部長が5回にわたって解説します。

 

一幅の絵 詰まる歴史

「間人皇后像」(江戸時代、中宮寺)

 奈良斑鳩の地で、飛鳥時代(7世紀)に創建された中宮寺。聖徳太子の母の間人(はしひと)皇后の宮を寺とした、あるいは皇后自身が寺を興した、などその成り立ちには諸説ある。隣の法隆寺と僧寺と尼寺の関係にあり、中宮寺も当初より聖徳太子と何らかの関わりを持っていたのであろう。

 この「間人皇后像」は、飛鳥時代の人でありながら十二単(ひとえ)をまとった美しい宮廷の女性の姿に描かれる。像の上にある賛(詩文)は、皇后を西方の阿弥陀仏とすることを説いている。

 これは「太子廟窟偈(びょうくつげ)」という文章からの抜粋で、冒頭にある我(わ)が身とは聖徳太子のこと。同文の他の箇所には、太子は救世観世音、太子の妃である橘大郎女(たちばなのおおいらつめ)は勢至菩薩(せいしぼさつ)と記される。間人皇后と合わせて阿弥陀三尊と同一視されていたことになる。こうした信仰は平安時代に生まれたようである。なかでも聖徳太子が救世観世音と等しいとする点は、超人視され神格化されていく聖徳太子への信仰の発展を考える上での要となる。

 この絵が描かれた江戸時代の中宮寺は、皇族や公家が住職を務める門跡寺院として営まれていた。絵を作らせたのは、後西天皇の皇女で中宮寺の第3代門跡となった慈雲院宮(じうんいんのみや)、描いた徳巌理豊(とくごんりほう)はその妹。賛は2人の姉の普賢院宮(ふげんいんのみや)が書いている。天皇家の姉妹による合作という訳である。

 たった一幅の絵から、中宮寺の長い歴史をひもとくと、多くのことが読み解ける。それにしても飛鳥時代の間人皇后が平安時代の十二単をまとうのは、江戸時代の人が考えた公家の正式な装束だったから、であろうか。(小泉惠英(よしひで)・九州国立博物館学芸部長)

=(2月23日付西日本新聞朝刊に掲載)=

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 920cd7c8d9
終了しました

福岡ミュージアムウィーク2025記念講演会
「鉛・埃・記憶―作品の『保存修復』がめざすもの」

2025/05/17(土)
福岡市美術館 1階 ミュージアムホール

Thumb mini 17a76aaec2
終了間近

コレクションによる版画展
ジョルジュ・ルオー「流れる星のサーカス」

2025/02/08(土) 〜 2025/05/18(日)
長島美術館

Thumb mini 6ca16a0955
終了間近

コレクション展Ⅲ 特集 海外に渡った画家たち

2025/02/08(土) 〜 2025/05/18(日)
北九州市立美術館 本館

Thumb mini 44a62b446a
終了間近

特別企画展 新世界『透明標本』展

2025/03/15(土) 〜 2025/05/18(日)
スペースLABO(北九州市科学館)1階 企画展示室

Thumb mini f8aafa22ff
終了間近

写実絵画の精鋭展

2025/03/20(木) 〜 2025/05/18(日)
佐賀県立美術館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini be5217cc92
コラム

思惟の姿 中宮寺の国宝<下>ほほ笑み

Thumb mini 78698618f6
レポート

九州初公開「菩薩半跏思惟像」が360度全方位から鑑賞できる! 九州国立博物館で特別展「奈良 中宮寺の国宝」が開催中【レポート】

Thumb mini df94a4ddd4
コラム

思惟の姿 中宮寺の国宝<上>影と光 

Thumb mini 1ebf898531
ニュース

第三期クラウドファンディング開始!リターン品にはみうらじゅん氏イラストTシャツも

Thumb mini a04d5cc9c6
ニュース

予習にピッタリな解説動画も!九州国立博物館 特別展「奈良 中宮寺の国宝」

特集記事をもっと見る