御大典記念 特別展
よみがえる正倉院宝物
―再現模造にみる天平の技―
2021/04/20(火) 〜 2021/06/13(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2021/06/10 |
写真のベルトは黒漆に金のバックルが輝く。青い宝石ラピスラズリが大胆だ。下はベルトの保管ケース。豪華な螺鈿(らでん)の花に水晶が付く。現代の高級コレクションと見まがうが、1300年前の奈良・正倉院の宝物、正確にはその再現模造だ。
ラピスラズリはアフガニスタンで採掘され西欧に伝わった。宗教画で粉末顔料として使われ、希少性から聖母マリアの衣などに限定的に使われた。東方に伝わって紺玉帯(こんぎょくのおび)と呼ばれるベルトの飾りになり、正倉院に達した。一辺約3センチの塊が13個。いかにもぜいたくな使い方だ。
正倉院宝物の再現模造86件が福岡県太宰府市の九州国立博物館に展示されている。現代の名工により制作された。歴史的価値は実物に宿るが、再現模造の有用性は高い。制作技術を再検証する過程でさまざまな発見がある。先のベルトも残存していた実物を研究するうちに、本来の長さは167・6センチであることが判明した。
再現模造は、死蔵させることなく宝物への理解を深め、さらなる長期保存への知見を得ることにつながる。
シルクロード東端にある唐の長安に倣った奈良の都は、朱塗りの楼閣や黄金の仏具の極彩色に彩られていた。今にも使えそうな実感を伴う展示物の数々は、当時の国際性や進取の気風をまざまざと思い起こさせる。風化し、色あせた実物では難しいことだ。
千年以上も宝物を保存してきた正倉院は校倉(あぜくら)造りという独特の構造で知られる。倉の壁は、断面が三角形の木材を積み上げて造られている。木材の膨張と収縮で隙間が開閉し、湿度を適度に保つのだと学校で習った。
これは誤解のようだ。2001年の正倉院紀要に調査報告がある。湿度の調節に実際に寄与していたのは宝物を個別に納めた杉の木箱だった。
新しい知見を養ってこそ、宝が宝としての輝きを保ち、次の世代へと受け継がれていく。古い物を不可侵と捉えて継承するだけでは、杉の木箱の重要性に気付くことはなかっただろう。(写真デザイン部編集委員)
=(6月5日付西日本新聞朝刊に掲載)=
※御大典記念 特別展「よみがえる正倉院宝物-再現模造にみる天平の技-」は、九州国立博物館で6月13日(日)まで開催中です。
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