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漫画の中 歩く感動 キングダム展-信- 8月3日、福岡市美術館で開幕 原画や描き下ろし、巨大墨絵も/もっと九州

2021/08/20 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 春秋戦国時代の中国で将軍を夢見る少年信(しん)と、後に始皇帝となる若き王嬴政(えいせい)の出会いと成長を描いた歴史漫画「キングダム」。青年漫画誌で連載15年を数え、8千万部を超えるコミックス、テレビアニメ、映画と人気は絶大だ。その世界を体感する「キングダム展―信―」が8月3日、福岡市美術館で開幕する。福岡展に先だって開催中の東京展を訪ね、作者の原泰久さん=佐賀県基山町出身=に創作秘話や故郷への思いを聞いた。
(文・平原奈央子、写真・古賀亜矢子)

ド迫力の絵、せりふ。漫画とは違うコマ割りの見せ方にも注目だ(東京会場の様子)

■「キングダム展-信-」のチケットの販売はコチラ

 上野の森美術館で開かれている東京展に入ると、そこは戦乱の時代の、秦の国。信は幼なじみの漂(ひょう)と別れ、連戦を戦い抜きながら嬴政の中国統一に貢献する。展示空間いっぱいに単行本41巻までの原画400点以上、描き下ろしイラスト約20点、原画を拡大プリントした作品が張りめぐらされている。漫画本の中を歩くような興奮と感動。物語に引き込まれていく。

展描き下ろしイラスト「無名の少年」ⓒ原泰久/集英社

 見どころのひとつが、信が初陣で出会う巨人の将軍王騎(おうき)の絵だ。高さ3メートル。原さんが本展のために4日がかりで挑んだ。和紙に広がる墨の絶妙なにじみ具合が、迫り来る雰囲気を醸す。漫画の中で、信は初めて会った王騎の威容に度肝を抜かれた。まさにそんな衝撃を追体験するよう。

 自らが監修する漫画展が、原さんにとって長年の夢だった。13年前、師匠の漫画家井上雄彦さん=鹿児島県出身、代表作「スラムダンク」=が同じ上野の森美術館で漫画展を開いた。会場に立ち、「いつかは自分も」と思い続けてきた。

原画などの展示はストーリーに沿った構成で、未読の人も楽しみやすい(東京会場の様子)

 「人間の本質は光」「戦いがない世に」―。本展では、作中の決めぜりふをちりばめた。戦乱の中で互いを思いやり、平和を目指す登場人物たちの言葉は、現代に生きる人々に向けたメッセージでもある。作品には、学生時代に友人に助けられた思い出、会社員時代に真剣に働く先輩たちをまぶしく思った経験も生かされているという。

 構想ノートや参考文献の歴史書も展示され、キングダムの壮大で普遍的な魅力を余すところなく伝えていた。

展示手法にも工夫が凝らされている(東京会場の様子)

 

●「手作業の跡 全部見て」 作者 原泰久さん

和紙に墨を用いて4日がかりで描いた巨大な王騎の絵と、作者の原泰久さん
=3月下旬、東京都内(撮影・中村太一)

―構想から2年、完成した会場を見てどうですか
 最初は緊張しましたが、会場を回るたびに違う見え方がして面白いです。近づいたり、全体を見渡したりいろんな見方ができます。

―せりふやカットの形など漫画ならではのデザイン要素が楽しめます。
 せりふが降ってくるようなイメージで、漫画を読みながら進んでいく展示を目指しました。紙の制約を超え、絵も空間を限界まで使って展示しています。原画を大きく引き伸ばす拡大プリントの手法は、5年前の佐賀県立美術館で開いた漫画展で手応えをつかみました。手描きの細かい筆遣いが伝わり、佐賀での成功を本展に生かしました。

―描き下ろしの王騎の巨大な絵には圧倒されます。
 初めての試みでしたが、いいものができました。信が王騎に出会う最初のシーンを1枚にしたもので、展示のメインになりました。

―原画は鉛筆の下書きなども見ることができます。
 漫画は描いて、貼って、切ってというアナログな作業です。漫画本では見えない手作業の“跡”を全部見てほしいですね。

―連載開始から15年。振り返ると。
 昔の自分の絵は勢いがあっていいな、と思います。今はどうしても上手に描いてしまう。四六時中ずっと描いているので、おのずと上達したんでしょうか。もともと僕は絵がうまい方ではないのですが、数をこなして成長してきたんだなと。

―福岡展への意気込みと、故郷の佐賀県基山町への思いを聞かせてください。
 九州で開催でき、すごくうれしいです。東京展をブラッシュアップした形になれば。基山では子どもの頃から基肄(きい)城(日本最古とされる古代山城)跡に行くのが好きで、キングダムで戦場を描くときの参考にもしました。いつか地元に小さな展覧場を作りたいと思い描いています。お茶が飲めて、町おこしにもなれば。まだまだ青写真ですが。


=(7月1日付西日本新聞朝刊に掲載)=
 

▼はら・やすひさ
1975年生まれ、佐賀県基山町出身。東明館高(同町)から九州芸工大大学院(現九州大大学院)修士課程修了。在学中に「ちばてつや賞」ヤング部門で準大賞を受賞。会社勤めを経て、30歳の2006年、週刊ヤングジャンプで「キングダム」の連載開始。現61巻までの単行本発行部数は8千万部超。13年に同作で「手塚治虫文化賞マンガ大賞」を受賞した。

▼「キングダム展―信―」福岡会場
8月3日~9月26日、福岡市中央区の福岡市美術館。西日本新聞社など主催。原則月曜休館。入場料は一般・大学生1800円(土日祝日は200円増)、中高生1000円(同)、4歳~小学生600円(同)。西日本新聞イベントサービス=092(711)5491。

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