「浦川大志個展 スプリット・アイランド」
2026/01/06(火) 〜 2026/03/22(日)
09:30 〜 17:30
福岡市美術館
| 2026/03/10 |
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福岡県を拠点に活動する画家、浦川大志(たいし)さん(31)の大規模個展「スプリット・アイランド」が福岡市美術館で開かれている。2011年にこの美術館で現代美術に魅せられて以降、スマートフォンで社会とつながる世代ならではの「風景画」を追い求めてきた。自己批判を繰り返しながら作風を更新していく姿には、戦後の前衛美術集団「九州派」から吸収した反骨精神がにじむ。 (川口安子)
会場となった美術館2階の展示室は、浦川さんの原点と言える場所だ。高校2年生だった15年前の夏、九州派を代表する菊畑茂久馬さん(1935~2020)の回顧展で大型絵画「天動説」シリーズに出合った。キャンバスに縛り付けた棒を絵の具で覆った物質感の強さに圧倒された少年は、それから毎週、福岡県宗像市の実家から自転車で通い詰めた。卓球部から美術部に移り、見よう見まねで創作をスタート。常連となった画廊で43歳上の美術家に質問を重ねるなど貪欲に学んでいった。
浦川さんの代名詞と呼ばれる、デジタル画像のような高彩度のグラデーションが生まれたのは、九州産業大美術学科の卒業を控えた頃。福岡市内の会社に就職した後も制作を続け、縦4メートルの大作「風景と幽霊」が18年のVOCA展で大原美術館賞を受賞。ネット上にあふれる画像をモチーフに「風景画」として再構築した作品が話題となり一躍、注目されるようになった。
浦川さんは、スマホが普及し始めた時期に思春期を迎えたデジタルネーティブ世代だ。16歳の時に起きた東日本大震災では、津波などの映像を見た感想をリアルタイムで共有して「現実」を痛感し、絆を求めて急速に広がったSNSで人間関係を築いてきた。
「現代における風景は、必ずしも目の前に見えているものではない」と浦川さんは指摘する。デジタル機器を通して世界を見ることが当たり前になった時代の風景は、複数の人々の視点や情報メディアを巻き込んで成り立つ。「風景画とは、自分がどう世界を捉えているかを図式化する営みだと思う」
乾きが速いアクリル絵の具を筆に複数色のせて作り出すグラデーションは、その存在感の軽さやあいまいさを表現するものだった。
しかし他のアーティストと合作する機会が増えた昨年以降、浦川さんは独自のスタイルを崩しにかかっている。銅版画に初めて手を伸ばしたのは、手慣れたグラデーション技法を封じて表現の幅を広げるべきだと12歳上の美術家に助言されたことが大きい。
質感が重く乾きが遅い油絵の具を使った小品にも挑戦した。「コロナ禍以降、インスタントで分かりやすいものを求める風潮が急速に拡大し、軽さを肯定し続けることも危ういと思い始めた」。新作の大型絵画「セクションとしての世界(仮題)」は、民芸の陶器から引用したグラデーションを登場させることで時間的な深みを与える。
本展の目玉は、3年間にわたって展示される美術館ロビー壁画の公開制作だ。浦川さんが主題としたのは福岡という土地のアイデンティティー。大陸と本州のはざまで時代によって立ち位置を変化させてきた価値観の柔軟さを、組み替え可能な約50のパネルに分割して描くことで表現した。
パソコンやスマホで絵を描く人が増えた今、手描きというアナログな手法を福岡の地で続けるのは、九州派の影響が大きいと浦川さんは言う。「僕はギリギリ九州派の人たちと交流できた最後の世代。地方でつくり続ける創作への向き合い方を継承したい」。先の衆院選ではSNS上に表示される情報が偏るエコーチェンバー現象の影響が指摘されるなど、ネットは現実社会を変える力まで持ち始めている。九州派の精神を受け継いだ令和の画家は、これからどんな風景画を描いていくのだろう。
◇福岡市美術館の個展は22日まで。同市中央区薬院の「IAF SHOP」で21日までグループ展。
=(3月11日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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