六郷満山開山1300年記念[文化交流展特別展示]大分県国東宇佐
六郷満山(ろくごうまんざん)展
~神と仏と鬼の郷~
2017/09/13(水) 〜 2017/11/05(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
宮本喜代美 2017/09/29 |
『大分県国東宇佐 六郷満山展 〜神と仏と鬼の郷〜』との開催を記念して、フォトグラファー・川上信也さんと行く「国東宇佐の旅」。宇佐神宮に続き、連載2回目はいよいよ国東半島へ。
国東半島は大分県の北東部に位置する円い形の半島で、紀行作家らによる「日本の秘境100選」にも選ばれている神秘的な場所。奇岩奇峰がダイナミックに天を衝き、むきだしの岩肌は容易に人を寄せ付けない険しさが漂っている。
平安時代から中世にかけて、九州最大の荘園領主であった宇佐神宮の庇護と影響のもと、国東半島は仏の里として隆盛を極めた。半島一帯にある寺院群は総称して「六郷満山」と呼ばれ、当時は65もの天台宗寺院があったという。今も30近くの寺院が残り、独特の山岳宗教文化にふれることができる。
この日最初に訪れた「真木大堂」は、かつて六郷満山最大の規模を誇ったと伝わるお寺。収蔵庫には、国指定の重要文化財である仏像が9体も安置されており、六郷満山の栄華を今に伝えている。
真木大堂の仏様の魅力は、その迫力にある。なかでも不動明王立像と大威徳明王像はいずれも高さ約2.5mと木彫りのものとしては日本最大級。もう、圧倒的な存在感!この巨像を拝めるだけでも行く価値は十分にあるというもの。それぞれにお顔立ちも雰囲気も霊験も異なる、9体の個性的な仏様が一堂に会するレアなお堂。推しメンならぬ推し仏様を探したい向きには非常におすすめだ。
また真木大堂の旧本堂では、国東半島では極めて珍しい木造の仁王像が迎えてくれる。江戸時代に建てられたという旧本堂は畳敷きになっており、靴を脱いで上がることができる。おおらかな佇まいの仁王様を近くに感じながら、ゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがだろうか。
次に向かったのは、国東半島で最も有名なお寺であろう、国宝の富貴寺大堂を擁する「富貴寺」。富貴寺大堂は、京都の平等院鳳凰堂や平泉の中尊寺金色堂と並ぶ阿弥陀堂のひとつに数えられており、歴史の教科書にも載っているほど。某有名俳優が出演したCMロケ地としても知られている。
富貴寺大堂は、宇佐神宮の大宮司である宇佐氏が極楽往生を祈願して建立した。想像上の極楽浄土を具現化したもので、創建当初、御本尊の阿弥陀如来は金箔で加飾され、堂内も極彩色で彩られていたという。「お堂が建てられた平安時代後期は、末法思想という、仏の正しい教えが廃れて世の中が乱れるとする予言思想が広まった時期です。金色に輝く阿弥陀様を拝観し、極楽浄土が描かれた堂内に身を置くことでこの世にいながら極楽を体感し、世の平穏を祈っていたのでしょう」と富貴寺ご住職の河野英信氏。
現在は木目が美しく、柔らかい表情が印象的な阿弥陀如来だが、目を凝らすとわずかに残った金箔が見てとれる。壁画も色は剥落しているものの、壁や柱には雅やかな文様や仏様、天人が描かれているのがわかる。ひんやり静かなお堂の中で、それらを探し見つけ出していくのは愉しい時間だ。
その日の夜は、富貴寺に隣接する宿「蕗薹(ふきのとう)」に宿泊。これまでに泊まった宿坊の簡素なイメージを覆す、品の良い和風旅館だ。大浴場は温泉で、効能が強すぎる温泉には負けてしまうヘタレ肌の私でも大丈夫な、まろやかな肌あたりがうれしい炭酸水素塩泉。夕食は、ご住職の奥様が作る野菜たっぷりの田舎料理。みずみずしさが沁みる、毎日でも食べたい味!そばはご子息である副住職が打っている。
翌朝は富貴寺大堂にて、宿泊者のみが体験できる坐禅に参加。ご住職に「数息観」という、息を数える修行法を教えてもらい、瞑想状態へ…。時間にして10分ほどの長いような短いような時間を過ごし、我に返ると、境内の緑の眩しいこと!空気も体も軽く感じる。不思議だ。福岡に戻って何度か数息観を試したが、富貴寺大堂で体験したほどの感覚は得られていない。富貴寺大堂は、やはり極楽なのかもしれないな。また身を委ねに行こう。
次回、国東の鬼に遭う!?
10月中旬頃にUPの予定です。お楽しみに。
この記事に関連するイベント
大分県国東宇佐 六郷満山展 ~神と仏と鬼の郷~
2017/9/13(水)〜11/5(日)
@九州国立博物館
<関連イベント>
国東岩戸寺修正鬼会
神秘の郷・国東の国指定重要無形⺠俗⽂化財である「岩戸寺修正鬼会」が実際に見られる!炎とともに鬼が来る!
2017/09/30(土)18:00~19:00
@九州国立博物館入口(太宰府天満宮 曲水の庭前の広場)
観覧無料
国東宇佐伝統行事特別公演
「岩戸寺修正鬼会」のほか「山香盆踊り」や「津嶋神楽」など、国東宇佐の5つの伝統行事が披露される。
2017/10/1(日)10:00〜15:00
@九州国立博物館1階ミュージアムホール
*10/1は先着200名に六郷満山霊場特別朱印帳の無料配布も!
<富貴寺大堂のライトアップや文化財の特別公開も!>
国東半島宇佐地域六郷満山開山1300年プレイベント
2017/10月〜12月
*「非公開文化財特別公開」と「ライトアップ&特別イベント」は公開寺院等により日時が異なる
宮本喜代美(みやもと・きよみ)
企画/編集/原稿書き
1969年奈良県奈良市生まれ。1991年、沖縄在住時に旅行情報誌のライターとなる。1993年に来福、シティ情報ふくおか編集部を経て1996年フリーランスに。現在は九州の旅行・観光にまつわる企画・編集・執筆業務を行うほか、情報発信を軸とした地域活性のアドバイザーなども務める。山や海など、風通しの良い場所をこよなく愛する自然派。せつない曲ばかりをかける音楽イベント「セツ☆NIGHT」
川上信也(かわかみ・しんや)
フォトグラファー
1971年愛媛県松山市生まれ。福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。その後福岡を拠点にプロ活動を開始し、様々な雑誌撮影に関わり風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行っている。ライフワークとして九州の自然風景を撮り続けており、定期的に写真集を出版し、写真展やトークショーを開催している。
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館
2025/01/21(火) 〜 2025/05/11(日)
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2024/10/31(木) 〜 2024/11/25(月)
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2024/10/26(土) 〜 2024/12/01(日)
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