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鬼は、ご先祖様が姿を変えたものだから。国東宇佐の旅その3・鬼に遭う編/六郷満山展 開催記念(連載4回)【コラム】

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宮本喜代美
2017/10/12
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『大分県国東宇佐 六郷満山展 〜神と仏と鬼の郷〜』の開催を記念して、フォトグラファー・川上信也さんと行く「国東宇佐の旅」。今回は、鬼にまつわるエピソードをめぐる旅へと案内する。

と、その前に。
私が国東にハマったきっかけとなった奇祭「ケベス祭」が、櫛来社(岩倉八幡社)にて10/14(土)に行われる。始まりは1100年前とも600年前ともいわれる、起源も由来も不明という謎めいた火祭りであり、木彫りの面をつけた白装束の神・ケベスが、燃え盛る炎に何度も突入して火の粉を撒きちらす、というもの。暗闇、炎、耳にこだまする和太鼓と笛の音…怖いような美しいような、ちょっと異様でめちゃくちゃカッコいいこの祭りに心を奪われ、以降、私は国東に通うこととなる。

ケベス様(左)とケベス祭の様子(右)。火の粉を浴びると無病息災が叶うといわれているため、燃えにくい素材の服を着て出かけるべし。(写真提供:大分県)

祭りをもうひとつ。未体験で、来年こそ!と思っているのが「修正鬼会(しゅじょうおにえ)」だ。修正鬼会は、僧侶扮する鬼たちが松明を手に激しく舞い踊り、家内安全、五穀豊饒、無病息災を祈願する民俗行事。現在は国東の3つの寺で継承されており、天念寺では毎年、岩戸寺成佛寺では1年ごとに交互に催されている。

災払鬼と荒鬼が現れ、参詣者の1年の無事を祈る修正鬼会。国の重要無形民俗文化財にも指定されている。(写真提供:大分県)

今回最初に訪れた「鬼会の里」は、天念寺で毎年行われている修正鬼会が易しく理解できる施設。ここのおすすめは修正鬼会が体感できるシアターだ。臨場感あふれる祭りの音が流れる中、ライトアップされ次々と浮かび上がる鬼たち。これがなかなかの迫力で、思わず見入ってしまう。実際に使われる鬼面も展示されているが、鬼と聞いてイメージする悪鬼とは異なる、どこかユーモラスな表情が印象的。「鬼は仏様であり、ご先祖様が姿を変えたものですからね」と教えてくれたのは、鬼会の里館長の清末行孝氏。「修正鬼会は天念寺の大法要ですが、庶民にとっては、鬼の姿をしたご先祖様に会える楽しみな行事。荘厳さがある一方で、終盤には『鬼の目』という縁起餅が撒かれるなど、とても賑やか。次の開催日は2018年2月22日(木)です、ぜひご参拝ください」とのこと。

展示されている荒鬼の面。左右に付いているのはツノではなく耳である。

鬼会の里の館内には、麗しいお顔立ちの木造阿弥陀如来立像(国指定重要文化財)など3体が展示されているほか、食事処も併設。鬼会の里がある豊後高田市はそばの産地としても知られており、香り高いそばが味わえる。

地元のお母さんたちが手打ちするそばを使った「鬼の目そば」。
修正鬼会の舞台である天念寺講堂。身濯(みそそぎ)神社が横に並び、神仏習合を感じさせる。
天念寺の前を流れる長岩屋川の中に立つ「川中不動尊」。修正鬼会の日の夕刻、鬼に扮する僧侶たちは真冬の長岩屋川に入り身を清める。

次は、国東最大級といわれる巨大な苦逃幸来鬼 (くにさきおに)を訪ねて「胎蔵寺(たいぞうじ)」へ。苦逃幸来鬼は国東で昔から信仰されてきた鬼で、ハゼのヒレのような形をした大きな耳が特徴だ。「どんな人でも助けにゃならん、と救いの声に耳をそばだてていたら、大きくなったそうですよ」と、副住職の尼様、柴崎智照氏。

苦逃幸来鬼。元となった木彫りの鬼面は秘仏として厳重に保管されている。

鬼の耳より目を引くのが、お顔にキラキラ光るもの。境内の仏様たちもピカピカだ。お参りしている人が何かを熱心に貼っている…。智照氏いわく、「これはシール状の護符。以前、目の見えない方がお参りに来られた際、うちの住職がその方の手を取り仏様に触れさせたところ、とても感激されて。護符を貼ってお参りする方法を思いついたそうです」。貼りながら指先で仏様を感じ、ご利益を願う護符シールには「良い種を蒔いて、良い芽を出そう」という意味をもつ梵字が書かれている。しかし仏様にシールを貼るとは奇想天外な!智照氏がまた強烈で、まるでエネルギーの塊のような人。有難い説法と冗談を交えたマシンガントークに圧倒されながら、このカオスぶりが国東らしいな、と感じていた。国東がもつ底知れぬ魅力の扉をまたひとつ開けてしまったな、と。「ヘンなお寺でしょ。でも国東一のパワースポットと言われる方もいますよ。こげなもんかと思うか、楽しいと感じるか。受け止め方は強制しません。ちょっとでも気になると思ったなら、ぜひお参りください」。智照氏は国東占星術の占師でもあり、尼僧ならではの視点で開運を指南してくれる。完全予約制。

シールがめいっぱい貼られた不動明王。多くの祈りの結晶だ(左)。護符シール(右)。

胎蔵寺を後にし、すぐそばにある熊野磨崖仏へ。参道である山道を歩き、さらに自然石が乱積みされた99段の険しい石段をひたすら登って行く。この石段は鬼が積み上げたとされ、石段には神域を示す鳥居がかかる。またしても神仏習合、そして鬼!

急勾配の石段は鬼が一夜にして築いたと伝わる。

山道と石段を登ること約15分。急に左手に視界が開け、見上げるとその先には福々しいお顔の不動明王像と大日如来像が。なんというカタルシス。日本最大級というその大きさが包容力をもって迫り、安らかな気持ちとなる。

不動明王像(左)は約8mあり、大日如来像は約6.8m。国の史跡と重要文化財に指定されている。

取材が終わる頃、あたりはとっぷり暮れていた。空には満天の星。生涯、国東に住んだ江戸期の学者・思想家、三浦梅園は、星空の先に宇宙を見出し、天球儀を自作したという。国東は宇宙だな、ことほどさように、国東の魅力は計り知れない。

次は最終回!「護摩焚きへの誘い」は
10月下旬頃にUPの予定です。お楽しみに。

 

 

 

この記事に関連するイベント
大分県国東宇佐 六郷満山展 ~神と仏と鬼の郷~
2017/9/13(水)〜11/5(日)
@九州国立博物館

 

<同時開催>
特別展 開山1300年記念「聖なる山 -六郷満山と仁聞-」
2017/10/20(金)〜12/3(日)
@大分県立歴史博物館

<熊野磨崖仏のライトアップや文化財の特別公開も!>
六郷満山開山1300年 寺院ライトアップ&特別イベント

2017/10月〜12月
*ライトアップや非公開文化財特別公開は公開寺院等により日時が異なる


 


宮本喜代美(みやもと・きよみ)
企画/編集/原稿書き
1969年奈良県奈良市生まれ。1991年、沖縄在住時に旅行情報誌のライターとなる。1993年に来福、シティ情報ふくおか編集部を経て1996年フリーランスに。現在は九州の旅行・観光にまつわる企画・編集・執筆業務を行うほか、情報発信を軸とした地域活性のアドバイザーなども務める。山や海など、風通しの良い場所をこよなく愛する自然派。せつない曲ばかりをかける音楽イベント「セツ☆NIGHT」も不定期で開催している。

川上信也(かわかみ・しんや)
フォトグラファー
1971年愛媛県松山市生まれ。福岡大学建築学科卒業後、大分県くじゅうの法華院温泉山荘に1997年より5年間勤務。その間にくじゅうの風景写真、アジアの旅風景を撮り続ける。その後福岡を拠点にプロ活動を開始し、様々な雑誌撮影に関わり風景のみならず、自然光を生かした人物、建築、料理など、様々な撮影を行っている。ライフワークとして九州の自然風景を撮り続けており、定期的に写真集を出版し、写真展やトークショーを開催している。

 

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