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ヒンドゥーの神々の物語②/インド大衆美術コレクター黒田豊氏【コラム】

2022/03/11 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 福岡アジア美術館で3月29日まで開催中の「ヒンドゥーの神々の物語」。同館学芸員の五十嵐理奈さんより展覧会の見どころを寄稿いただきました。

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  「ヒンドゥーの神々の物語」展の約500点の出品作品のうち、その半数を超える310点は、インド大衆美術コレクター黒田豊氏が福岡アジア美術館に寄贈されたコレクションです。いったい黒田豊氏とは、どんな方なのでしょうか。

 黒田豊氏は、1970年代末から40年以上インドに通い続け、サラリーマン・コレクターとしてコレクションを積み重ねてこられました。この間に集められたコレクションは、ガラス絵、石版画、木版画、カンパニー絵画、タントラ、ポスター、洋書挿絵、地図、さらにはインド向けに輸出された日本の陶器やマッチラベルなど5000点以上にのぼります。その魅力は、なんといっても、イギリス植民地時代のインドに生きた人々の信仰や流行、世俗的な興味関心など大衆の息づかいが感じられる作品群であることです。さらに興味深いのは、そのひとつひとつの作品について、関連する和洋書の資料とともにコレクションが形成されてきた点です。19世紀末から20世紀初頭のインドに広がった、膨大な視覚表現の海を見渡すための道しるべとなるこれらの資料には、黒田氏が作品に隠された楽しさを味わうために読み込んできた痕跡が残ります。2019年より、このコレクションと資料とを合わせて一括寄贈いただき、段階的に受け入れています。

図録の表紙にもなった作品。
作者不詳《笛を吹くクリシュナ》20世紀前半、
福岡アジア美術館(黒田豊コレクション)


 「黒田コレクション」を目にしたのは、黒田氏が作品を初めて一般公開された「インド大衆宗教画の世界」展(東海大学文学部、2009年)でのことでした。当時、インドに魅せられた日本のアーティストやコレクターを紹介する特別展「魅せられて、インド。」(福岡アジア美術館、2012年)を準備していた私は、その後、さらに黒田氏のコレクション室を訪ねました。歴史を掘り下げ、地域を横断して広がる黒田氏の解説とともに膨大なコレクションを見せていただき、そのほんの一部を展覧会で紹介しました。

黒田豊氏が最初に出会い買い求めた石版画。本展には未出品。
作者不詳《月神・チャンドラ》1910年代、
福岡アジア美術館(黒田豊コレクション)


 それから、13年。「ヒンドゥーの神々の物語」展では、当館の収蔵品として迎えた「黒田コレクション」を多彩に紹介する展覧会が実現しました。その作品群からは、黒田豊氏のインド大衆美術に対するまっすぐな愛情と、そして、インドの大衆の視覚的想像力の広がりが感じられるでしょう。これまで、アジア地域にあるアジア美術を収集・展示してきた当館ですが、今後はさらに日本に眠るアジア美術へも目を向けていく、ひとつのきっかけともなる展覧会です。

 なお、黒田豊氏には、1月9日に開催した本展のオープニングイベントにて、「魅せられて40年—インドの神様絵を蒐める」と題して、ギャラリートークをしていただきました。その模様は、こちらからお楽しみください。

(福岡アジア美術館学芸員・五十嵐理奈)

【ヒンドゥーの神々の物語①】はコチラ
【ヒンドゥーの神々の物語③】はコチラ
【ヒンドゥーの神々の物語④】はコチラ

 

インド独立75周年・日印国交樹立70周年
ヒンドゥーの神々の物語

会期:2022年1月2日(日)~3月29日(火)
観覧時間:9:30~18:00(金曜・土曜は20:00まで)
※ギャラリー入室は閉室30分前まで
休館日:水曜日
会場:福岡アジア美術館(福岡市博多区下川端町3-1 リバレインセンタービル7階)
観覧料:一般200円、高大生150円、中学生以下無料

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