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マルチに花開く芸術/「ミュシャ展」8日から福岡市美術館【コラム】

2023/04/05 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 優美な女性像のポスターで知られるチェコ出身の芸術家、アルフォンス・ミュシャ(1860~1939)の画業をたどる「ミュシャ展 マルチ・アーティストの先駆者」(西日本新聞社など主催)が8日、福岡市中央区の市美術館で始まる。これに先立って開かれた京都展(3月26日閉幕)を訪れ、しなやかな曲線と鮮やかな色を駆使したミュシャの作品世界に一足早く触れた。 (文・写真 塩田芳久)

ミュシャが名声を確立した演劇ポスター。装飾性の高い表現と構図の妙がパリの人々の心を捉えた

 ミュシャの肩書は何だろうか? 画家か、デザイナーか、それとも双方を生かした創造者(クリエーター)か。そんな疑問を抱えながら美術館「えき」KYOTO(京都市下京区)の会場を巡った。素描から油彩、グラフィック、デザインまでさ
まざまなジャンルの作品と向き合うと、タイトルの「マルチ・アーティストの先駆者」が最適解だと気付いた。一つの枠にとどまらないミュシャ芸術の多様性が伝わる展覧会だった。

 現在のチェコ南東部に生まれたミュシャは、画家を目指しパリに移ったが、生活のために本の挿絵や舞台美術などを手がけた。急な依頼に応じ、数日で仕上げた女優サラ・ベルナール主演の舞台劇「ジスモンダ」のポスターで“大ブレーク”。装飾パネルや宝飾品、商品のパッケージデザインなどでも高く評価された。後年はチェコに戻って原点の絵画に力を入れ、神話や歴史を題材にした連作「スラヴ叙事詩」など、祖国への思いを描き続けた。

「《スラヴ叙事詩》展」のポスター(左)。自ら撮った写真を基に制作した

 会場では、そんなミュシャの歩みを5章立てで紹介。第1章「挿絵画家としての出発」では、雑誌や書籍のために描いた挿絵の数々が並んだ。初期の作品だが、デッサンや画面構成の巧みさが伝わった。第2章「成功の頂点」は代表的なポスターと装飾パネルのコーナーで、華麗な女性像が目を引いた。風にそよぐ髪、流れるような衣装と、アールヌーボー(新しい芸術)を代表する芸術家らしく、美しい曲線を使った装飾的表現が印象的だった。

ミュシャの初期、挿絵画家時代の作品も並ぶ
装飾皿「ビザンティン風の頭部:ブロンド」(手前)。ミュシャの多彩な仕事の一例だ

 第3章「生活のなかのデザイン」では、さまざまな商品に使われたミュシャの図案を展示。宝石箱のような菓子の缶、アイリスの花柄をあしらった香水瓶など、大量消費の時代にマッチした「デザイナー」ミュシャが強調されていた。

ミュシャがパッケージをデザインしたビスケットの缶(手前)独自の装飾性が生かされている

 第4章「プライヴェートな生活の記録」では、ミュシャが撮影したモデルの写真や書簡などを公開。第5章「唯一無二のオリジナル作品」では、文字通りの1点ものの油彩、水彩、素描の数々が鑑賞できた。「画家」として美を追究するミュシャの姿勢は、挿絵やポスターの時代から不変であることがよく分かる作品群だった。

 同美術館の三宅礼夏学芸員は「日本初公開作品を含めミュシャの仕事を網羅的に紹介することで、マルチアーティストとしての才能を再確認できる展覧会。有名なポスターしか知らなかった人も、『こんな仕事もしていたんだ』と新しい発見があるはず」と語った。

貴重な油彩画「エリシュカ」。後期の作品で、画業の「総決算」の思いと祖国への愛がにじむ


 暖色を中心とした色使いを楽しむもよし。アールヌーボーらしい髪の毛の曲線に見入るもよし。多才なミュシャの世界に、もうすぐ福岡で立ち会える。

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ミュシャ展 マルチ・アーティストの先駆者 
8日~6月4日、福岡市美術館。チェコ在住の医師ズデニェク・チマル博士のコレクションから、日本初公開の90点を含む約170点を展示する。入場料は一般1700円、高大生1000円、小中生600円(前売りは各200円引き)。西日本新聞イベントサービス=092(711)5491(平日午前9時半~午後5時半)。

=(4月1日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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