江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
2024/07/02 |
DNA解析 世界に衝撃
クジラとカバが同じ仲間?
福岡市博物館で7月3日に始まる「大哺乳類展―わけてつなげて大行進」。「外見はそっくりだけど、別の仲間」がテーマだった前回とは打って変わり、今回は「外見は全然違うのに、実は同系統」を紹介する。逆もまた成り立つのが、「分類」と「系 統」の面白さだ。
ここでクイズ! クジラやイルカに近い哺乳類はなーんだ? 答えはウシやシカ、カバなど、偶数のひづめを持つ偶蹄(ぐうてい)類。特にクジラに最も近いのはカバ。会場にはクジラやイルカ、カバの胃が展示され、複数の部屋に分かれた構造が共通していることが分かる。
クジラと偶蹄類の関係は、日本人研究者がDNA解析を基に1997年に発表し、世界に衝撃を与えた。これを機に、偶蹄目と鯨目は統合されて鯨偶蹄目という新たな分類単位ができた。20世紀末から盛んになったDNA解析は生物の研究分野にも応用されている。
クジラやイルカと同じく水の中で暮らす海牛目のジュゴンやマナティーは、長鼻目のゾウや、アフリカなどの岩場に生息するイワダヌキ目のハイラックスと同じ系統だと分かっている。外見や生態は違うのに、何とも不思議だ。
どうしてこんなことが分かるのか。それは、DNA解析に加え、大昔の動物の化石を現在の動物と比較、研究することで明らかになる。動物は常に進化し、姿形を変えていくため、長い年月をかけて多くの種類に枝分かれしていく。
本展には、約200点の剝製標本を同じ系統ごとに並べた「大行進」が登場する。大迫力の動物たちが楽しめるだけでなく、それぞれの類縁関係が一目で分かるようになっているので、参考にしてほしい。世界最大の哺乳類、シロナガスクジラの心臓の実物大レプリカも見どころだ。
本展監修者の一人で、クジラやイルカを専門とする国立科学博物館の田島木綿子(ゆうこ)研究主幹は、DNA解析とともに、生態や形態を調べる伝統的な研究の重要性を指摘する。海辺にクジラが打ち上げられるたびに全国各地を飛び回り、フィールドワークを重ねている。
田島さんによると、クジラにも動脈硬化やアルツハイマー病があることが分かってきたという。この謎が解明されれば、ヒトの治療に役立つかもしれない。田島さんは福岡展に向けて「違ったり、実は同じだったりという面白さを感じてもらいながら、哺乳類は皆仲間なんだという視点を持ってほしい」と話した。
(石田禎裕が担当しました)
※「わけてつなげて 大哺乳類展」㊤はこちらから
■大哺乳類展-わけてつなげて大行進
7月3日~8月25日、福岡市博物館。西日本新聞社など主催、大和ハウス工業特別協賛。入場料一般2000円、高大生1200円、小中生800円、3歳以上の未就学児300円。月曜休館(7月15日と8月12日は開館、7月16日と8月16日は休館)。西日本新聞イベントサービス=092(711)5491。
=(7月2日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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