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【コラム】色あせない都会的センス 江口寿史展 福岡アジア美術館 来年1月12日まで

2024/12/19 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 会場では世代も国籍も異なる人たちが作品に見入っていた。福岡アジア美術館(福岡市博多区)で開催中の漫画家、イラストレーターの江口寿史さん(68)=熊本県水俣市出身=による「江口寿史展」。デビュー当時からの作品が並ぶが、都会的センスにあふれるイラストは今も色あせることなく人々を引きつけている。
(文・丸田みずほ、写真・古賀亜矢子)

江口作品は海外でも人気

 会場の天井から大型作品がつるされていた。開幕日に江口さんがライブドローイングで制作したもので、真っすぐにこちらを見つめる女性のまなざしは力強い。クールな女性をモチーフにしたイラストは江口さんの代名詞。雑誌や広告、CDジャケットなどのイラストを手がけてきた。

ライブドローイングで制作した「いつもいろいろおもっているよ」

 創作の源流は漫画にある。1977年、漫画家としてデビュー。見どころの一つは代表作「ストップ‼ひばりくん!」の扉絵やカバーの原画だ。斬新でポップな色彩のキャラクターは、その後のイラストの仕事へと自然につながっているのが見て取れる。

漫画「ストップ‼ひばりくん!」のカバー原画

 今、1980年代の日本のシティポップはアジアや欧米で再評価されている。その代表格の一つが大滝詠一さんのアルバム「A LONG VACATION(ロンバケ)」だ。江口さんは発売40周年記念としてトリビュートイラストを提供。海辺でロンバケのジャケットを持つ女性の後ろ姿を描いた作品は、80年代頃に漂っていた開放感を感じさせる。

音楽ジャケットも手がけてきた

 新型コロナ禍に制作した作品では、女性が雪の降る冬空を見上げ、少しだけマスクを下げて深呼吸する。時代の空気や流行を色濃く反映してきたからこそ、共感を集めるのだろう。

新型コロナ禍に描かれたマスク姿の女性。
冬空の下でそっと深呼吸する

 約500点の中には、水俣にあるハート形のモニュメントや温泉などを背景に女性を描いた観光ポスターがあった。今回は九州初の大規模個展となる。故郷への思いも垣間見える展覧会だ。

 

▼江口寿史展 来年1月12日まで福岡市博多区の福岡アジア美術館。漫画のほか、雑誌、小説、広告などのイラストを数多く手がけてきた江口さんの初期から最新作まで約500点を紹介する。観覧料は一般1500円、高大生900円、小中生500円。水曜と12月26日~1月1日は休館。西日本新聞イベントサービス(平日のみ)=092(711)5491。

=(12月14日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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