
九州国立博物館連携企画 体験ミュージアム/令和6年度 夏季特別展
「黄金の茶室と福岡のお茶」
2024/07/23(火) 〜 2024/09/08(日)
09:00 〜 17:00
大野城心のふるさと館
アルトネ編集部 2025/01/09 |
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日本各地の発掘調査で注目された出土品を集めた「発掘された日本列島2024」展が、福岡県大野城市の大野城心のふるさと館で開催中。30周年を迎えた今回は北海道や東日本からの出土品を中心に約540点が展示されています。
本展の企画に関わった文化庁の文化財調査官が、それぞれのイチ押しの遺跡や出土品など見どころをご紹介いたします。第1回目は調査官・芝康次郎(しば・こうじろう)さんです。
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1月5日から福岡県・大野城心のふるさと館で開催されている「発掘された日本列島2024」展では、北海道の遺跡から出土した遺物を多く展示しています。中でも九州の皆さんにぜひご覧いただきたいのが、わがまちが誇る遺跡コーナーに展示している「旧石器時代の大石器工房 史跡ピリカ遺跡」です。
北海道の旧石器時代遺跡といえば、2023年、国宝に指定された遠軽町の「白滝遺跡群出土品」が傑出した存在として知られています。豊富な黒曜石を背景とした巨大で優美な尖頭器(せんとうき)や石刃(せきじん)は見る者を圧倒する迫力と、えも言われぬ神秘に満ちあふれています。
その白滝遺跡群出土品と双璧を成すのが、ピリカ遺跡の石器です。何がそう言わしめるのか。約2万5千年前~1万5千年前の人々が作った石器群が語るものは何なのか。少し紹介します。
史跡ピリカ遺跡は、北海道南部・渡島半島の今金町にある遺跡です。総面積は20万平方メートル、これまでにその一部で発掘調査が実施され、20万点以上の石器が出土しています。まさに桁違い。なぜこれほど石器が出土するかというと、遺跡の近くに珪質頁岩(けいしつけつがん)の原石が産出するからです。石器作りに恵まれた環境下で約1万年間、断続的に石器作りの大工房として機能した遺跡と言えます。
今回の展示品で、まず目を引くのはその巨大さです。長さ30センチを超える石刃(せきじん/縦長で、両側辺が直線的な石器。ナイフとして使われるほか、ヤリ先などの素材にもなる)と、その石刃を打ち割る母材である石核(せっかく)は、圧巻の一言です。発掘調査では、これらの石器が打ち割った当時の状態をほぼ維持して出土し、立体パズルのように接合しています。
巨大な石器同士が接合したことで分かったのが、石器作りの「うまさ」です。いや「うまい」という陳腐な言葉ではとても片付けられません。同規格の石刃を連続的に剝離するには、どこをどのように、どの順序で割ればよいかという綿密な計画性がなければなりません。また、的確に打ち割る正確性も必要です。この接合資料からは一切無駄のない石器作り、そして「巧み」とも呼べる確かな腕を見ることができます。
なぜこうした巨大な石器が必要だったのか。旧石器時代の人々は基本的に遊動民であるということを念頭に置かねばなりません。現在よりも平均気温にして7、8度寒い氷期、彼らは厳しい資源環境下に置かれました。つまり食料獲得の時期は限られます。ピリカ遺跡の人々は、有限たる資源をいかに無駄なく使うかというリスク管理をしながら石器づくりを行い、それらの石器を狩りや他の暮らしの場に持ち出して用いることで、厳しい資源環境をたくましく乗り越えたのです。2万年前のそんなエピソードが隠されている実物を、ぜひ現地でご覧ください。
文化庁文化財第二課埋蔵文化財部門
芝康次郎(しば・こうじろう)
愛媛県生まれ。熊本大学大学院社会文化科学研究科で博士号を取得。奈良文化財研究所研究員などを経て2020年4月から現職。専門は旧石器時代。趣味は山登り、おいしいお酒を飲むこと。
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大野城こころのふるさと館 令和6年度冬季特別展「発掘された日本列島2024」
会期 2025年1月5日(日) 〜 2月16日(日)
会場 大野城心のふるさと館(福岡県大野城市)
開館時間 9時~17時 ※最終入場は閉館30分前まで
休館日 月曜 ※祝日、振替休日の場合は開館、翌平日
料金 一般400円、高校生以下無料
展覧会公式サイトはこちら→
冬季特別展「発掘された日本列島 2024」 - 大野城心のふるさと館
2025/02/08(土) 〜 2025/04/06(日)
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2025/01/21(火) 〜 2025/05/11(日)
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2025/01/25(土) 〜 2025/03/20(木)
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2025/01/05(日) 〜 2025/02/16(日)
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2025/01/04(土) 〜 2025/02/09(日)
下関市立美術館