大野城心のふるさと館 令和6年度冬季特別展「発掘された日本列島 2024」
2025/01/05(日) 〜 2025/02/16(日)
09:00 〜 17:00
大野城心のふるさと館
アルトネ編集部 2025/01/21 |
日本各地の発掘調査で注目された出土品を集めた「発掘された日本列島2024」展が、福岡県大野城市の大野城心のふるさと館で好評開催中です。
本展の企画に関わった文化庁の文化財調査官が、それぞれのイチ押しの遺跡や出土品など見どころ紹介、第2回目は調査官・大澤正吾(おおさわ・しょうご)さんです。
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赤堀茶臼山古墳は、群馬県伊勢崎市に所在する古墳時代中期の帆立貝形古墳です。墳長は62.4㍍で、5世紀前半の築造と考えられています。昭和4年に帝室博物館(現東京国立博物館)の後藤守一によって発掘調査され、家形、椅子形、盾形、蓋形など、豊富な形象埴輪が出土したことで著名な古墳です。とりわけ家形埴輪の配置状況を復元し、これを豪族の居館を具現化したものと考えた学説は、家形埴輪の研究史上、重要な位置を占めています。
その後、平成7~9年にかけて赤堀町(現伊勢崎市)が発掘調査を行いましたが、この際、推定の大きさが75㌢を超える大型の鶏形埴輪が、前方部の周溝から出土しています。注目されるのは、赤堀茶臼山古墳から出土したこの鶏形埴輪と、南に約3㌔離れた釜ノ口遺跡から出土した羽の破片とが接合した点です。釜ノ口遺跡では、ほかにも赤堀茶臼山古墳のものとよく似た家形埴輪などが出土しており、工房など埴輪生産に関係する遺跡ではないかと考えられています。古墳時代の埴輪生産や流通のあり方を具体的に考える上でも重要な資料といえます。
鶏は、足の後ろにある蹴爪の有無が雌雄で異なります。この鶏形埴輪には、雄鶏だけにある蹴爪が表現されていますので、雄鶏であることが分かります。東京国立博物館には、雄鶏の個体よりも頸部の肉垂が小さいものが所蔵されており、これは雌鶏と考えられています。赤堀茶臼山古墳には雌雄の鶏形埴輪が樹立されていたことが分かります。
また、足の下を見ると、両足が止まり木をつかんでいる表現を見ることができます。時告げ鳥とも呼ばれる鶏は、日中は歩き回り餌をついばみ、夜になると木に止まり、夜明けを告げて鳴きます。朝を告げるこの生態から、太陽を呼ぶ動物として神聖視されたのではないかとみられていますが、これに加え、木にとまる表現がなされる鶏形埴輪は、夜の世界、つまり死後の世界を表している、と考えることもできるかもしれません。鶏形埴輪は、家形埴輪とともに、最も古く出現する形象埴輪の一つであり、埴輪の表す世界観、そして古墳の世界観を考える上でも重要です。大型の鶏形埴輪で全形が復元されているものはそう多くはありません。ぜひ会場でご覧いただきたいと思っています。
執筆者
大澤正吾(おおさわ・しょうご)
文化庁文化財第二課埋蔵文化財部門
長野県上田市生まれ。2008年東京大卒業、13年東京大学大学院博士課程中退、同年奈良文化財研究所入所。2022年から現職。専門は古墳時代から古代。趣味はバスケットボール。
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大野城こころのふるさと館 令和6年度冬季特別展「発掘された日本列島2024」
会期 2025年1月5日(日) 〜 2月16日(日)
会場 大野城心のふるさと館(福岡県大野城市)
開館時間 9時~17時 ※最終入場は閉館30分前まで
休館日 月曜 ※祝日、振替休日の場合は開館、翌平日
料金 一般400円、高校生以下無料
展覧会公式サイトはこちら→
冬季特別展「発掘された日本列島 2024」 - 大野城心のふるさと館
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