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前衛芸術集団「九州派」の資料室開設へ。谷口利夫さんアトリエを改装【コラム】

2018/08/07 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

現存しない作品の写真など展示
1950~60年代、福岡を拠点に活動した前衛芸術集団「九州派」の元メンバー、谷口利夫さん(85)は、福岡市中央区の自宅兼アトリエの一部を改装し、九州派の歩みをかろうじて残る作品や写真で振り返る資料室を開設する。九州派の作品はほとんど現存しておらず、作品を記録した写真は資料的価値が高い。谷口さんは「年内に開館したい」と語り、準備を進めている。
九州派は、桜井孝身さん(故人)や菊畑茂久馬さん(83)らが57年に結成。東京中心のアカデミックな芸術表現に対抗して「反芸術」「反東京」を掲げ、アスファルトや廃品を多用した作品で異彩を放った。谷口さんは61年から解散する65年まで参加、絵画教育に熱心なことでも知られる。

「第7楽章・檻」の前に立つ谷口利夫さん。「年内に資料室を開きたい」と話す


谷口さん宅には、鉄のオブジェ「第7楽章・檻(おり)」(64年)など自身の代表作のほか、桜井さんやオチオサムさん(故人)ら九州派の仲間から購入した作品が残る。活動の様子やメンバーの作品を記録した写真も貴重で、銀座画廊で開いた九州派展を訪れた岡本太郎の写真もある。
80歳を過ぎ、「身の回りの作品や写真を整理し、展示したい」と考えるようになった谷口さん。元メンバーの多くが他界するなか、「写真を持っている自分ならではのことをしよう」と思いを強めた。昨年、絵画教室を閉め、資料室の開設準備に力を入れる。九州派と交流した他団体の資料も並べるという。
九州派に詳しい福岡市美術館の山口洋三学芸員は「谷口さんが参加した後半期は、個人の活動が盛んで多様だった時期。作品はほとんど残っておらず、作品を記録した写真は重要だ」と話す。同美術館が3年前に刊行した叢書(そうしょ)「九州派大全」にも谷口さんの写真を数多く収録したという。
九州派の面々が集い、語り合ったという谷口さんのアトリエ。「他のメンバーの作品も手に入れて展示し、九州派のことを語りたい」と谷口さんは語る。

 

九州派の「その後」知る作品展 福岡市のギャラリーモリタ

福岡市中央区赤坂のギャラリーモリタで、1950~60年代に活動した前衛芸術集団「九州派」の展覧会が開かれている=写真。解散後の作品がほとんどだが、九州派の「その後」を垣間見られる。
本展は、リーダーの桜井孝身(2016年死去)、石橋泰幸(01年死去)、磨墨(するすみ)静量(同)を中心に5人の作品27点が並ぶ。真っ赤な人物像のほか、赤く塗ったキャンバスを切っていくつもの扉を表した「開かれた朱」(97年)は、パラダイス(楽園)を求めた九州派解散後の桜井らしい。
石橋のフェルトを使った作品(制作時期不明)も興味深い。柔らかなマチエールを感じさせる黒いフェルトを張った画面に、電気ゴテを当てて線を引いた。九州派時代のアスファルトを使った作品とは裏腹に、全体の雰囲気は落ち着いているが、その攻撃的な線に、九州派の名残を感じる。
展覧会を企画した同ギャラリーの森田俊一郎さんは「福岡のコンテンポラリーアートの基礎を作った。彼らの作品には歴史をつくった重みがある」と言う。九州派を解散後、作家たちはそれぞれの道を歩み制作を続けた。「その後」に目を向けなければ、九州派の全体像を理解できない。半世紀を過ぎてもなお「九州派」の作家たちそれぞれの強い個性が色あせていないことをあらためて実感できる展示にもなっている。

◇Exhibition 九州派 12日まで、ギャラリーモリタ(福岡市中央区赤坂)=092(716)1032。月曜休廊。

(野村大輔)=8月2日西日本新聞朝刊に掲載=

 

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