江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
2020/10/15 |
アスファルトを用いた作品などで半ば伝説と化している福岡発の前衛美術集団「九州派」と、現代を彩る九州ゆかりの若手アーティストたちを抱き合わせた展示は、会場の百貨店内で特異な存在感を放っている。福岡市博多区の博多阪急で開催中の「異彩を放つ九州派~それから~」と「Kyushu New Art」だ。
「異彩―」で紹介するのは九州派に属した15人。リーダー格である桜井孝身の絵画は、色彩に土俗的な香りが漂い、オチオサムの描く球体には冷静な感覚がにじむ。そこに宮崎準之助の民具のような木彫、尾花成春の砂や泥を思わせる絵肌が並ぶ展示室は壮観だ。
なぜ今、九州派なのか。
注目すべきは、展示している約150点の大部分が、集団としての活動を10年余りで終えた九州派のメンバーの、1960年代後半以降の制作作品という点だろう。近年は専門家による研究が重ねられ、美術館への作品収蔵も進んだ九州派だが、福岡市で「ギャラリーモリタ」を主宰する森田俊一郎は、九州派以後に各作家が生み出した作品が遺族のもとなどにまだ相当数残っていることに注目した。海外も含むアート市場で十分通用するとの認識をここ数年で強め、今回の企画を考えたという。
折しもコロナ禍である。海外の名品が目玉となるような大規模展が中止となり、スケジュールを自館の所蔵品展に切り替えた美術館も少なくない。今回の企画は、美術の世界で生じつつある、足元の地域を見つめ直す機運とも軌を一にしている。ただ、九州派のような戦後美術のレガシーだけでなく、今まさに足元で活躍する作家に目を向けたのも興味深い。
「Kyushu―」の会場では、九州出身や在住の47組が競演する。浦川大志(福岡県出身)の絵画は、スマートフォン上で目にする様々なイメージを組み合わせ、ディストピア的な世界を現出する。しまうちみか(熊本県出身)のテラコッタ彫刻「やわらかなオブジェ」シリーズは、ぬらりとした指の痕跡が印象的だ。三津木晶など、既に海外のアートフェアで評価の高い作家も出品されている。
今年は、国内外の美術ギャラリーが集まって作品を展示販売する「アートフェアアジア福岡」(例年9月開催)がコロナ禍で中止となった。規模はそれに及ばないとはいえ、九州派も含めて「九州」でくくられた展示に、これだけ多彩な作品が並ぶ事実自体が、次なる可能性を予感させる。
「異彩―」は博多阪急7階、「Kyushu―」は同8階で18日まで。(諏訪部真)
=(10月15日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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