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「メディアアートの輪廻転生」 最先端技術と表現 賞味期限いつまで?【コラム】

2018/10/25 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

最先端の技術を使った作品の賞味期限はいつまでだろう。生まれ落ちた瞬間? 作者が死ぬまで? それとも、見る者がいる限り永遠?
そんな根源的で深淵(しんえん)な問いを鑑賞者に投げかける展覧会が、山口市の山口情報芸術センター(YCAM)で開かれている。何かと流行(はやり)のメディアアートがテーマと聞けば取っつきやすそうだが、並べられた作品の前を巡ると、めくるめく禅問答のような世界に誘(いざな)われる。

会場に設置されたメディアアートの「墓」。周辺にはアーティストたちの言葉が掲げられている


会場中央には直径10メートル、高さ3.5メートルの円すい形の「墓」が設置され、内部に国内外で活躍するアーティスト8組が「死」を迎えたと考える自らの作品を収めた。他に、1960年代から映像作品を手掛け、この分野の先駆者ナムジュン・パイク(1932~2006)が作品で使用したモニターなども展示されている。
メディアアートの作品は、ビデオやコンピューターといった時代の先端技術を活用し、映像や音響などによって表現される。人気のプロジェクションマッピングを表現手段として取り入れるアーティストもいる。

「墓」の中には「死」を迎えた作品が展示されている。右がナムジュン・パイクの作品から取り外されたモニター


作品の死を巡る考察で、なぜメディアアートを選んだのか? YCAMは2003年のオープン以来、メディアアートの作品展示や先端技術を使った舞台芸術の公演などを行ってきた。近年、パソコンのOSの更新や機械の生産中止などによって、ソフトや機材が動かせず展示そのものが難しくなるケースが増えているという。
パイクのモニターは、韓国で収蔵されている作品(1989年)の一部だったが、故障で取り換えられたために「死骸」となったという。つまり、機械は古くなり技術は更新され続けるという避けがたい事実によって、メディアアートは常に「死」と背中合わせとなる宿命にあるのだ。
江渡浩一郎の「WebHopper」は、インターネットが普及し始めた96年の作品。利用者がどの場所のサーバーにアクセスしたのかを、モニター上の世界地図に可視化した。現在はセキュリティー上の問題で、基幹回線にシステムを設置するこの作品は成立しえないと江渡は考え、データが入ったハードディスクを「墓」に収めた。
本展に広がりを与えるのは、会場の至る所に掲げられたアーティストたちの言葉であろう。YCAMは事前に124人にアンケートを実施した。作品の寿命や死の定義などについて尋ね、41件あった回答の一部を並べた。
作品の死について、高嶺格=鹿児島県出身=は〈作品の「コード」が1ミリも理解されなくなったとき〉と答え、梅田哲也は〈時代や世間に対する毒や批評性をまったく失ってしまった状態〉と指摘する。
メディアアートに限らず、現代美術は時代に切り込む鋭さによって同時代の鑑賞者に深い気づきを与える。その鋭さとメディアアートが追い求める技術への先進性は相似形なのかもしれない。広大な美術の一ジャンルから発せられた問いは、美術は、いや、表現は時代に対していつまで有効なのか、という射程の長い思索を鑑賞者に求めるのだ。 (藤原賢吾)=10月24日 西日本新聞朝刊に掲載=

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