特別展「室町将軍 ―戦乱と美の足利十五代―」
2019/07/13(土) 〜 2019/09/01(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2019/07/22 |
近年、室町時代が注目されている。南北朝から戦国期にかけて激しい戦乱が続いた一方で、水墨画や能、茶道の発展など、現在につながる日本らしい文化が花開いた。こうした時代のうねりを、将軍家を軸に描き出すのが、九州国立博物館(福岡県太宰府市)で開かれる特別展「室町将軍 戦乱と美の足利十五代」(西日本新聞社など主催)。13日からの開幕を前に、幕府が置かれた京都でゆかりの地を訪ねた。
初夏の柔らかな風が木々の間を通り抜ける。周囲には大学や住宅が並ぶが、庭園に入ると、静寂に包まれている。京都市北区の「等持院」。足利氏の菩提寺(ぼだいじ)だ。
室町幕府の初代将軍、足利尊氏のブレーンだった夢窓疎石が開いた。もともと尊氏は京都の中心部に邸宅を構え、隣接地に「等持寺」を建立。その別院として建てられたのが等持院。市街地の等持寺が戦国時代に廃寺になった後も、等持院は残った。
等持院では、歴代足利将軍の木像を制作し続けた。在職期間が短かった5代義量(よしかず)、14代義栄(よしひで)の2人を除き、13人の座像がそろっている。今回の特別展で、寺外で初めて公開される。
将軍家は戦国時代になると力が衰え、各地の有力守護を頼って「流浪の将軍」となる。それでも、木像を連綿と作ったのは「どんな時代でも、将軍家のお膝元(ひざもと)としての意識が強かったからでは」(等持院)と言う。
江戸末期には、等持院から木像3体の首が持ち出され、河原にさらされる事件もあった。南北朝時代の南朝が正統とされ、足利氏が反逆者として批判されるようになったためだ。
しかし室町幕府が後の時代に大きな影響を与えたことは間違いない。将軍たちは多くの寺院に寄進し、絵画や書などの文化を育てた。「室町時代は、公家や武士、そして中国からの文化を再構成し、新しい文化の規範をつくった」。特別展を企画した九州国立博物館の一瀬智主任研究員は言う。
等持院から北に少し歩くと、鹿苑寺(金閣寺)に着く。3代義満が造営した。外国人を含めた多くの観光客でにぎわう。そこから京都市街地の反対側には、8代義政による慈照寺(銀閣寺)がある。京都観光の代表格が、いずれも室町将軍家の遺産、ということになる。
●歴代将軍の横顔
足利将軍家は、それぞれが個性的だ。戦争や暗殺で命を落とした将軍も少なくないが、連歌をたしなんだり、絵筆をとったりと、文化的な素養も備えていた。15代の将軍の生没年と横顔を紹介する。
初代:足利尊氏(たかうじ) 1305~1358年。下野国(栃木県)の有力豪族で源氏の棟梁(とうりょう)。鎌倉幕府の倒幕に加わり、後醍醐天皇から離反した後に北朝の光明天皇を擁して初代将軍となった。
2代:足利義詮(よしあきら) 1330~1367年。尊氏の子。室町幕府の基盤を固めた。
3代:足利義満(よしみつ) 1358~1408年。義詮の子。京都・北山に金閣を営むなど、将軍職を譲ってからも権力を誇った。
4代:足利義持(よしもち) 1386~1428年。義満の子。禅宗と儒学を愛好した。
5代:足利義量(よしかず) 1407~1425年。義持の子。病気がちで19歳で亡くなった。
6代:足利義教(よしのり) 1394~1441年。義満の子。くじ引きで将軍となる。強権的に振る舞い、最期は殺害される。
7代:足利義勝(よしかつ) 1434~1443年。義教の子。9歳で将軍になるが、8カ月で病没した。
8代:足利義政(よしまさ) 1436~1490年。義教の子。有力者の内紛を抑えられず、応仁の乱を引き起こす。銀閣の造営など東山文化を育てた。
9代:足利義尚(よしひさ) 1465~1489年。義政の子。将軍の権威復活を目指したが、戦陣で没した。
10代:足利義稙(よしたね) 1466~1523年。義政の弟である義視の子。有力守護の下で各地を転々とし、2回将軍職に就いた。
11代:足利義澄(よしずみ) 1480~1511年。義政の弟である政知の子。いとこの義稙と激しく将軍職を争った。
12代:足利義晴(よしはる) 1511~1550年。義澄の子。京都を追われ近江(滋賀県)に長期滞在した。
13代:足利義輝(よしてる) 1536~1565年。義晴の子。戦国大名の間を取り持つ役割を果たした。
14代足利義栄(よしひで) 1538~1568年。義晴のおい。四国生まれで、将軍になっても入京できず、在職は8カ月。
15代足利義昭(よしあき) 1537~1597年。義晴の子。織田信長と共に入京するが、信長に追放されて室町幕府が終わる。
(根井輝雄)=7月12日 西日本新聞朝刊に掲載=
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