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【インタビュー】ルーヴル美術館特別展 ルーヴルNO.9 漫画家・寺田克也さんインタビュー

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アルトネ編集部
2017/04/28
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福岡アジア美術館で開催中の展覧会「ルーヴルNO.9」の関連イベントとして、出展作家の一人である漫画家の寺田克也さんに「漫画」でルーヴル美術館を表現する「ルーヴル美術館BDプロジェクト」への参加と制作のエピソード、漫画と芸術への想いなどを語っていただいた。(アルトネ編集部)

4月18日に福岡アジア美術館で開催されたトークショーのため来福された漫画家の寺田克也さん

 

Q.本プロジェクトの参加のいきさつと、出展作品『ルーヴル消失』の制作に関するエピソードなどを教えてください。

2016年初め頃に、このプロジェクト参加の打診を受け、「まずはルーヴル美術館に来てほしい」ということなので、ルーヴル美術館休館日に2時間だけ、作品を鑑賞する時間を貰った。それが初めてのルーヴル美術館体験。

とても2時間で全てを鑑賞することはできないので、《サモトラケのニケ》や《モナ・リザ》など、美術館のシンボルといわれる作品ではなく、自分だけの作品を探しに行くような気持で美術館を回った。その上で「ルーヴル美術館をできるだけ描かない」ことを作品のコンセプトにしようと考え、今回の出展作品『ルーヴル消失』に繋がった。実際にルーヴルを訪問して、作品として描いたのは美術館外壁の雨どいだけ。雨どいには龍の彫刻が施されていて、その彫刻を作品に使おうと考えた。

 

Q.バンド・デシネ(フランス語圏の漫画のこと)と自作との関係についてお聞かせください。

自分の作品は、バンド・デシネからは多大な影響を受けている。15歳の時に書店でメビウス(フランスの著名なバンドデシネ作家)の作品を見て、「自分の欲しかったタッチはこれだ!」と思った。と同時に日本の漫画からも多大な影響を受けているので、2つの漫画文化から影響を受けて、今に繋がっている。人生の一番多感な時期にメビウスに出会わなかったら、今の作風とは全く違ったのではないだろうか。

 

Q. 『ルーヴル消失』はiPadで制作されたそうですが、デジタル機器で制作されている理由を教えてください。

今、たまたまiPadに嵌って制作に使っているだけで、特に大きな理由はない。デジタルツールを使うと、作品のサイズを可変できるというメリットもあるが、単純に線の表現だけでいけばアナログで描いた線のほうが強い。いずれにしてもいかに気持ちよく表現できるかでツールはその時々の気分で変わっていく。

今後デジタル機器などの進歩は進むかもしれないが、「コマ」の強弱とセリフでストーリーを表現していくという点は変わらない。絵だけでも駄目で、ストーリーだけでも苦しい。いかにハーモニーをとるのかが大切だし、バランスが一番大切だと考えている。

その場で実際にイラストを描きながら寺田さんのトークショーは進められた

 

Q.寺田さんが考える本展覧会の見どころを教えてください。

この展覧会は、作品をつくる過程自体や、その空気感が展示に表現されている。そのような展覧会はあまりないと思うので、ぜひ会場で体感してほしい。また、作家自体の原稿もなかなか見る機会はないので、そちらもぜひご覧いただきたい。

 

寺田さんはトークショーでは実際の制作にも使用しているiPadを会場に持ち込んで、実際に作品を描きながらトークショーを行った。作品が目の前で出来上がるのを見ていた観客は、魅入られたように作品が描かれる過程を見ていたが、寺田さん本人は、終始飄々と絵を描きながら話していたのが印象的だった。また、寺田さんの制作に対する考えを伺いながら、ルーヴル美術館文化制作局出版部副部長のファブリス・ドゥアールさんが「技術がいかに変わろうとも作家が表現する欲求によって漫画はこれからも発展する」と語っていた(https://artne.jp/interview/27)ことを思い起こし、やはり作品を生み出す原動力は作家の表現に対する欲求から来ていると改めて感じた。

絵画と文学のハイブリッドによって紡がれる、最も新しい芸術表現・漫画を紹介する展覧会「ルーヴルNO.9」、ぜひ会場でお楽しみいただきたい。

 

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