京都・醍醐寺展 -真言密教の宇宙-
2019/01/29(火) 〜 2019/03/24(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
伊勢田美保 2019/03/08 |
2月16日、九州国立博物館で開催中の特別展「京都・醍醐寺−真言密教の宇宙」にちなみ、ラグビーの五郎丸選手を特別ゲストにお迎えして行われたイベント「ニッポンの力」。前回のレポートでは、進行役のBUTCHさん、本展担当学芸員の森實久美子さんも交えたトークショーの模様をたっぷりご紹介しました。そして実はこのトークショー終了後、特別に五郎丸さんをインタビューさせていただくことができました!本展の感想など、こちらもたっぷり伺ってきましたよ。
―トークショーを終えて率直なご感想は。
五郎丸さん(以下、五郎丸) ラグビーワールドカップのPRのためでしたが、今回、九州国立博物館に初めて来ました。普段から展覧会などにはあまり行かず、醍醐寺にも行ったことがありません。いい経験になりました。出身地である福岡に帰ってきたのは、母校の小学校でラグビーを教えた去年の11月以来です。みなさんの前に登壇させていただき、「帰ってきた」という感じでしたね。
―担当学芸員の森實さんのアテンドで、展示会場にも足を運ばれたんですよね。どんな印象を持たれましたか?
五郎丸 国宝を目にする機会はなかなかないので、非常に感動しましたし、こういう世界もあるんだなと。人生の中での、一つの素晴らしい経験をさせてもらいました。本来、京都にあるものがこうして身近な博物館にあること自体が魅力的なことだし、トークショーでも森實さんがおっしゃってましたけど、やはり本物を生で見るのは、感じ方が違いますね。普段展覧会やお寺に行かない私ですが、これを、いいきっかけにできたらいいなと思います。
―個人的にグッときたポイントはどこでしょう?
五郎丸 奈良時代からずっと大事にされてきたものが多く展示されていましたが、よくここまできれいに保存されてきたなと。保存状態が非常に素晴らしかったですね。あと五大明王像。顔が6面あったり、手が何本も生えていたり。不思議だな〜と思ったけど、その不思議さが、当時の人々にも大きなインパクトを与えたんでしょうね。
―イベントで学芸員の森實さんが、もしや五郎丸ポーズの元になったのでは?と話されてた《大威徳明王(だいいとくみょうおう)》ですが、実際のところ・・どうなんですか?
五郎丸 ん〜信じるか信じないかは、あなた次第ということで(笑)
―(笑)。醍醐寺に伝わるさまざまな時代の作品が一堂に会しています。もし行けるとしたら、五郎丸さんはどの作品の時代に行ってみたいですか?
五郎丸 展示の終盤で、豊臣秀吉が「醍醐の花見」をしたことが展示物とともに紹介されていて、他のところから700本の桜の木を植樹して開いたということに、非常にびっくりしました。できるのであれば、豊臣秀吉に会ってみたいし、花見にも参加してみたいですね(笑)
―また会場の外、1階のエントランスでは、「ラグビーワールドカップ2019」関連の展示もあり、多くのお客さまが足を止めていらっしゃいました。どうご覧になりましたか?(展示は〜2/17)
五郎丸 私のイメージですが、博物館に来られる方で、スポーツ観戦をされている方は少ないような印象があります。普段なかなか触れる機会もないですし、そうした方々にいいきっかけになってくれていたらいいなと思いましたね。
―そのエントランスで先ほど、五郎丸さんのサイン色紙のプレゼントもありましたね。お子さんのラグビーボールを持つなどやりとりされていました。あれはどんな話を?
五郎丸 「ボールを触ってください」って言われたんですよ。「くれるの?」って言ったら、返してって(笑)。
―うれしかったでしょうね(笑)五郎丸さんは、母校にラグビーを教えに行かれたり普段からお子さんたちとのふれあいも大事にされている印象です。ラグビーを通して伝えたいことは?
五郎丸 私は幼少期にサッカーをしていたんですが、当時、福岡ブルックス(現・アビスパ福岡)の選手が自分の小学校に来て、教えてくれたことがありました。その時の喜びが自分の中では大きくて、自分がこういう立場になったからこそ、子供たちに何か伝えたい。ラグビーと直接つながらなくても、人生の中で何か一つの大きなきっかけになってくれたらうれしいなと思っています。ラグビーをやってほしい思いも、もちろんありますが。
―彼も将来立派なラグビー選手に?
五郎丸 なってくれたらうれしいですね(笑)
―ラグビー競技を続けてきてよかったこと、ラグビーの魅力とは?
五郎丸 勝ち負けはいろいろありますが、その中でたくさんの方に出会えたのが私の財産です。ラグビーの魅力を言うとしたら…1時間かかりますよ(笑)とても一言では言えません。でも日本人は、世界的に見ても比較的体が小さいです。そんな日本人が、体の大きい外国人相手に立ち向かっていく姿は、何か大きなものを変える力があると思うし、「ラグビーワールドカップ2019」ではそれを感じてもらえるんじゃないかと思います。
―ラグビーをはじめとするスポーツ観戦と、今回の醍醐寺展のような文化財の鑑賞。共通する魅力は、どんなところだと思いますか?
五郎丸 やっぱり「本物」というところでしょうね。ラグビーは普通に生活していては見ることのできない光景に出会えますし、博物館だったら国宝など普段触れることのないものに出会えます。今はインターネットで探せばいくらでも画像が出てくる時代ですが、そうではなくて「生」で見ることに、大きな意味があると思います。
―「伝える」という視点でも、国宝や文化財はいにしえの人が大切に守り、伝えられてきたものです。五郎丸さんがラグビーで守り、伝えていきたい思いとは何でしょうか。
五郎丸 ラグビーは、いろんな体型の人たちがピッチに立って、自分の仕事を全うし、チームのために犠牲になれるところが素晴らしい。この9月はその世界大会が日本に来るということで、このスポーツの良さをできるだけ多くの方に伝えていきたいですね。
―「ラグビーワールドカップ2019」は、全国12会場で開催され、福岡でも開催されます。
五郎丸 オリンピックと違って、ワールドカップは全国各地で開かれます。そういった意味でも非常に魅力ある大会の一つだと思います。
―対して「醍醐寺展」は、東京と福岡2カ所だけの開催です。福岡以外の方や、本展をまだご覧になっていない方にメッセージをいただけますか。
五郎丸 自分の目で見る機会が本当に少ない国宝に出会えますので、ぜひ足を運んでいただきたいですね。あと福岡には博物館だけじゃなくていろんな魅力があります。食事もおいしいし、ここは太宰府天満宮も近くにある。イベントに来たついでに、いろんなものを楽しんで、福岡を満喫して帰ってほしいですね。
―ありがとうございます!最後に、今回はスポーツと博物館という異色のコラボでした。このイベントでラグビーのPRをした思いを聞かせてください。
五郎丸 実はラグビーを見に来ている方にラグビーの良さをPRしても、メッセージとして全く伝わらないだろうという思いがあります。ピッチの外に出て、全くラグビーに触れたことのない方にメッセージを伝えることこそが、本来のPRだと感じますし、僕自身はそれをやらなければいけない立場にいると思う。これからも積極的にやっていきたいです。
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五郎丸歩
1986年生まれ、福岡県出身。佐賀県立佐賀工業高等学校、早稲田大学スポーツ科学部スポーツ文化学科卒業。2015年日本代表として「ラグビーW杯2015」に出場。南アフリカに勝利し、日本人初となるW杯ベスト15選出に貢献。その後は活動の拠点を海外に移し、2017年に日本帰国後、ヤマハ発動機ジュビロに所属。現在もトップリーグ最多得点記録を更新中。
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