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大注目の「京都・醍醐寺−真言密教の宇宙」に行ってきた(前編)【レポート】

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伊勢田美保
2019/02/15
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2016年中国の開催では80万人以上を動員したという「醍醐寺展」。日本の開催は東京と福岡の2拠点のみというスペシャルな展覧会が、九州国立博物館で開催中です。醍醐寺は、874年に空海の孫弟子・理源大師聖宝(しょうぼう)により開かれた京都の名刹。ピンとこない方も、実は「醍醐味」という言葉に由来のあるお寺、と聞けばぐっと親近感が湧くのではないでしょうか。(醍醐とは乳製品五味の最上のものの名前で、山中で聖宝が出会った老翁が、湧き出た水を飲み「醍醐味なり」と讃えたことが寺名の由来だそう)

真言宗醍醐派の総本山であり、世界文化遺産にも登録されている境内には、15万点にも及ぶ寺宝が保存されているそうで、今回はそこから厳選された104点が来福。しかも国宝が32件、重要文化財が49件も集まるとのこと!期待に胸を膨らませ、さっそく開催初日に行ってきました。

 

会場入り口ではグッズも販売

展示室に入ってすぐ、大きくふくらむ人だかりに足が止まりました。その視線の先には《如意輪観音坐像》。傾げた頭を右手で支えるようにしながら、微笑みをこちらに向けていました。説明によると、聖宝が醍醐寺の始まりに祀って以来、特別に信仰されてきたものだとか。1000年にわたり人々の祈りを一身に受けてきたその表情は何とも穏やかで、じっと見入ってしまいます。

重要文化財《如意輪観音坐像》平安時代,10世紀

 京都南東の醍醐山にある、200万坪以上もの広大な醍醐寺の境内は、山頂に上醍醐、そこから1時間ほど歩いた裾野に下醍醐が広がります。この下醍醐に建つ五重塔は、寺の草創期である951年に建立された、京都府下でもっとも古い木造建築物です。板壁や柱は、密教の教えを絵にした両界曼荼羅などで埋め尽くされていたそうで、今回はその一つ《旧連子窓羽目板断片》が展示されています。木の傷みは否めませんが、一方で、描かれた絵柄は色彩も鮮やかに残り、保存状態の良さに驚きます。

 

国宝《五重塔初重壁画両界曼荼羅図 旧連子窓羽目板断片》
平安時代,951年

続いては、平安時代に彫られた《五大明王像》です。こちらは躍動感がすごい!五大、つまり5人の明王さまが、炎を背に、おのおの弓や剣を持った複数の手を振りかざしています。眉を吊り上げ、大きくギロリと見開いた目は、魔を退け、煩悩を断つためのものだとか。

 

重要文化財《五大明王像》平安時代,10世紀

すぐ隣には鎌倉時代に描かれた《五大尊像》もあり、見比べてみるのも面白いです。ちなみに私は降三世(こうざんぜ)明王の姿に惹かれたので、チラリとご紹介。

 《五大明王像》のうち、降三世明王

 

国宝《五大尊像》のうち、降三世明王 鎌倉時代,12〜13世紀(展示期間~2月24日まで)

 いかがでしょう?感じ方は人それぞれですが、私は五大明王像の猛々しい印象に対し、五大尊像には少しユニークさも感じました。


そして、今回展覧会のメインビジュアルにもなっている、本尊・薬師如来坐像。人々がその姿を一心に見つめる空間には、どこか他と違う重厚な静けさが漂っていました。

 

国宝《薬師如来および両脇侍像(りょうきょうじぞう)》平安時代,10世紀

 

 

醍醐天皇の願いで作られた薬師如来。背後の壁には寺院を思わせる朱色の柱が立ち、手前には密教法具も設置され、まるでお堂の中にいるようです。

創建期から天皇や貴族、台頭する武士に厚く信仰されたことから、醍醐寺には縁の品々も数多く残ります。豊臣秀吉が愛用したといわれる美しい黄金の天目茶碗や、亡くなる半年前、醍醐寺で盛大に催した生涯最後の花見で書かれた、《醍醐花見短冊》などは見ものです。

《金天目および金天目台》安土桃山時代,16世紀

 

重要文化財《醍醐花見短冊》安土桃山時代,1598年 ※展示替えあり

 

展示の一つ一つにストーリーがあり、さまざまに思いを馳せながら見ていくと、時間もあっという間に過ぎてしまいました。まだまだ見所はたくさんありますが、今回ご紹介するのはここまで。次回のレポートでは、展示品の中でも密教を伝え継ぐために書かれた書跡にスポットを当てながら、公開初日に行われた声明公演の様子も合わせてご紹介したいと思います。どうぞお楽しみに!

※すべて醍醐寺蔵

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