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「マンモス展」福岡PR大使のゴリけんさんが、監修者2人にインタビュー

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アルトネ編集部
2020/02/19
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福岡市科学館で大好評開催中の「マンモス展~その生命は蘇るのか~」で行われたトークイベント後に(前編後編)マンモス展の福岡PR大使のゴリけんさんが、本展監修者である作家・クリエイターのいとうせいこうさんと野尻湖ナウマンゾウ博物館の近藤洋一館長へのインタビューを実施しました。実はゴリけんさん、若手時代にいとうさんと共演したことがあるとのこと。そんな御縁もあり、冒頭からインタビューは盛り上がります。

 

―――実は十数年前に、いとうさんにネタを見せるという番組で共演したことがありまして、その時は結構辛口をいただいたんですけど(笑)

〈いとうさん〉そうだっけ?(笑)悪い悪い!

冒頭から和やかな雰囲気

 

―――そんなわたくしもようやく、マンモス展の福岡PR大使を拝命するまで上り詰めましたよ!では早速ですが、お二人に疑問をぶつけていきたいと思います。

まず、僕も拝見したんですけど、ユカギルマンモスの頭部、圧巻でした。あれは学者の人たちから見て、どれだけレアなものなんでしょうか?。

〈近藤先生〉最近は、マンモスハンターの人たちが(高く売れる)牙だけを持って行ってしまうんです。だから、マンモスで牙と頭部がそろって残っている標本というのは最近では非常に貴重なんです。また、冷凍標本として出てくるマンモスは当時川で流されたりした子供のマンモスがほとんどなんですが、あのユカギルマンモスは50歳くらいの大人のマンモス。完璧な状態で様々な情報が詰まった冷凍標本は、非常に珍しいです。

 

―――学者の方は、あの冷凍標本を見てどのようなことがお分かりになるんですか?

〈近藤先生〉本当に様々なことから情報が得られます。耳の大きさであったり、そこにある穴の大きさやそれが開いているか閉じているか、ということからも得られる情報はありますし、CTスキャンで脳の大きさも想定できます。今のゾウとの違いを見ることによって、どこが進化して、逆にどこが変わらず残っているのかも判ってきます。

 

―――なるほど。本当にいろいろなことが分かってくるんですね。話は少し変わるんですが、僕はギャートルズ世代で、マンモスを見ているとマンモスの肉っておいしいのかな、という疑問がでてくるんですが、実際のところどうなんでしょう。

〈近藤先生〉冷凍マンモスを実際に食べた人がいるんですよ、日本人で。戦時中にシベリアに抑留されていた人たちは、マンモスの肉のほかに食べるものがなかったようです。

 

―――えーーー!!まったく想定していなかったお答えです(笑)味はどうだったんでしょう?

〈近藤先生〉硬かったらしいです。本来食べるものではないんでしょうね。

〈いとうさん〉僕らがマンモス展の視察でサハ共和国にいったときに、現地で会った人が、マンモスを見つけたときにあんまりにも新鮮だったから、思わず食べたって言ってたよ。美味しくなかったって。ギャートルズが食べてたのは焼いたマンモスだったんじゃないかな。

 

―――焼きが入ればマンモスも旨くなるってことですかね(笑)狩りをしていた時代も焼いていたんでしょうか?

〈近藤先生〉焼きもあったようですが、干し肉として保存していたみたいですよ。あとは、野菜を食べられない地域に住むイヌイットの人たちが、ミネラル摂取のために、マンモスの内臓を食べていたという話もあります。現地のひとたちはそれを美味しく召し上がっていたようですが、急に日本人が同じ状況でマンモスを食べるとなっても、まず匂いから受け付けられないんですね。プロデューサーの田中さんが現地の料理を受け付けられなかった話と同じですね。

〈いとうさん〉ほかの国の人が納豆を食べられないのと同じだろうね。

 

―――マンモスだけでなく、その当時の生活までに色々なことまで想像が膨らんできますね。そんなマンモス展ですが、お二人からみて、ほかの展覧会と「ここは違う!」という部分があれば教えてください。

〈いとうさん〉僕はこの展覧会のストーリーを作る部分に関わったんですが、この展覧会は「過去」にも触れられるし、「現在」の温暖化の話もかかわっているし、「未来」にこのマンモスを蘇らせようとしている科学者も紹介されている。こんなに様々なテーマをもった展覧会って実はないんですよ。あれだけ貴重な標本があるから、冷凍標本をみせて完結、となってしまいそうなところを、近畿大学の研究を取り上げて、どれくらい現在の科学が進歩していて、どこまで倫理的に許されるべきなのか、という問題にまで突っ込んでいる。こういった未来に投げかけるテーマをもつことによって、この展覧会は時が何万年にも及んでいる。そういったスケールの大きさもこの展覧会の特徴のひとつ。

 

―――なるほど。今回のマンモスがでてきたというのも、地球温暖化が影響しているんですよね。そういった切り口のテーマも設定されている。自分も、この展覧会をみた後に、いろいろな感情がでてきました。

〈いとうさん〉そうなんだよ。切ない展覧会でもあるんだよ。最近は日本も地震や台風なんかで災害というもがますます身近なものになってきている。そういう意味では他人ごとではない、私たちの生活にも関係のあるテーマを取り扱っているんだよ。そういう展覧会にしたかったし、そういった気持ちが伝わっている実感もある。

 

―――そうなんですよね。福岡でも展覧会を見た後に「見たぞー!」というテンションの高い感想を持つ人よりは、じーと何かを考えて帰っていく人達の方が目立ちます。僕もそうなりました。

〈いとうさん〉いい反応!そうなってほしかったんだよね。

 

―――よかったです。扱いやすさだけはぼく負けませんから。扱いやすさで僕、福岡で仕事いただいてますから

(一同笑)

 

―――近藤先生は如何でしょうか。先生にとっての、この展覧会の、ほかの人が気づいていなそうな、一押しポイントは何でしょう?

〈近藤先生〉ケサイですね。サイの骨格標本。

 

―――ケサイですか!?冷凍展示品ではく、ケサイですか。正直あまり印象に残っていなかったです。

〈近藤先生〉あれはね、古生物学者からすると本当に素晴らしいものなんですよ。あのケサイについている角は、世界2本しか見つかってない非常に貴重なものなんです。それがまた全身骨格として見られる。凄いことです。

―――まさかのマンモスではないんですね(笑)

〈近藤先生〉なんでケサイが重要かというと、じつはマンモスとケサイってものすごく仲がいいんです。必ず一緒にいる。マンモスの周りにはこのケサイがいたり、バイソンがいたり、ハイエナがいたり、これらの動物が群がる中にマンモスは存在していた。こういったような「マンモス動物群」というマンモスをトップにおいた生態系の全体を見てほしい。こう考えると、マンモスだけではなく、ケサイを含むほかの動物たちを復活させることも考えなければいけなくなる。

〈いとうさん〉すごい。復活動物園じゃないですか(笑)

〈近藤先生〉そうなんです。ロシアでは実際にそういった壮大な実験も現在進行形でとり組まれているんです。

 

―――ケサイがそんなにすごいものだったとは。そう考えると、本当に何回来ても違った楽しみ方ができる展覧会になっているんですね。
それで、本日のトークイベントでもお話されていましたが、お二人が実際に行かれたサハ共和国、とんでもないところですね!-40℃の世界ということですが、その時の話を聞かせてください。

〈いとうさん〉今回の仕事を引き受けるにあたって、ちゃんと現場を見ていないと(お客さんに)見抜かれると思ったんですよ。そうしてスタッフみんなで実際に現地の風土なんかも感じることで初めて、展覧会のビジュアルなんかも見えてきた。やっぱり現地で見て、触れると全く得るものが変わってくる。

展覧会も同じで、記事などで情報を見聞きするだけではなく、実際に会場に足を運んで、自分の目で見て触って、感じてほしい。

―――なるほど、とはいえ―40℃、命がけですよね。

〈近藤先生〉本当に命がけですよ。トークでも話をしたけど、サハ共和国に行く途中、なんの予告もなく、よく知らない空港に着陸してしばらく足止めをくらったんんだよね。その時なんて、隣のロシア人が泣いてたからね。あの時はほんとに死を覚悟しましたよ(笑)

〈いとうさん〉そうそう。着いたら着いたで馬小屋みたいなところに暫く滞在させられるしね。

 

―――そういう場所に実際に行かれたことで、実際の発掘の大変さなんかが分かって、展覧会もリアルになりますよね。

〈いとうさん〉そういうことなんだよ。うまいこと言えるようになったじゃない。

 

―――有難うございます、十数年かけて成長したんです。

(一同笑)

 

―――マンモスの研究はこれからも進んでいくかと思うんですが、今後はどんな展開がまっていると思いますか?

〈近藤先生〉DNAの研究はいまが過渡期で、これからどんどん凄いことが分かってくるんです。コンピューターの中で生物というものが成り立つようになってくる。ヴァーチャルのマンモスがPCの中で生きてくる世界。それを現実の中に持っていく、という世界になって来るが、そうなるとますます倫理的な面を考える必要がでてくるんですね。

科学者の考え方と、それを社会がどのようなコンセンサスを持って受け入れて、人類の平和と発展に寄与できるのかという問題が新たに出てくる。実はそういったコンセンサスはまだ形成されていないんです。研究や技術だけがどんどん先を行っているけれど、まだその部分が成熟していないんですよ。もっと地球全体で問題提起や議論を発展させていく必要がありますね。マンモス展というのはそこについて、皆さんに問いかけているんです。

 

―――聞けば聞くほど、いろんな見方がある展覧会なのだと感じます。それでは最後にいとうさん、マンモス展を何を見て感じてほしいか、教えてください。

〈いとうさん〉本当に、いろんな要素が万華鏡みたいに詰まっている展覧会なんです。だから、どれに反応するかはあなた次第なんです。でもただ、一つ言えるのは、今まで九州に上陸したことない古生物たちが、本当に昨日まで生きていたんじゃないかと思うような状態で、福岡市科学館に展示されています。これを見たら、とにかく何か感じるはずだと、皆さんに強く訴えたいです。

ありがとうございました!

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