
特別展「珠玉の近代絵画-「南国」を描く。」
2025/10/11(土) 〜 2025/11/24(月)
09:30 〜 17:30
福岡市美術館
アルトネ編集部 2025/10/12 |
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陽光に満ちた「南国」は、近代日本の画家たちにとって夢と発見の地でした。近世以前は多分に想像の地であった「南国」ですが、明治以降その認識が大きく変わりました。
彼らは異国の風景に憧れ、実際に旅に出て、色彩と光の新世界を絵筆に託しました。10月11日から福岡市美術館で開催される『珠玉の近代絵画 「南国」を描く。』では、そんな家たちのまなざしを通して、「南」を描いた近代絵画約200点が一堂に会します。会場はプロローグとエピローグを含む全5章で構成されています。
展覧会の冒頭を飾るのは千草掃雲の≪木陰≫。八丈島特有の強い日差しを避け、木陰でまどろむ猫がとても愛らしい作品です。
冨田渓仙は福岡市出身の日本画家。この≪沖縄三題≫は沖縄のイルカ漁を題材に描いた作品です。本土とは異なる光景を目の前にした作家の興奮が伝わってくるかのようです。
異国である南国に憧れ、実際にパラオ諸島を訪問し民俗史料の収集に尽力した民俗学者の土方久功による、現地の材料や手法を用いた彫刻作品群です。また、土方と共に南洋諸島に駐留していた杉浦佐助は、海軍少将の市丸利之介の依頼によて≪ヤマタノオロチ像≫を制作していますが、本作は鉄木という南国特有の素材が用いられています。
中村研一による≪安南を憶ふ≫。ベトナムの民族衣装、アオザイを身にまとい、椅子にもたれてくつろぐ女性を描いています。中村は従軍画家として現地の記録画なども残していますが、このような異国情緒あふれるロマンティックな作品も描いています。
なお、こちらは本展覧会には展示されていませんが、ベトナム人画家のルオン・スアン・ニーが1940年に描いた作品《読書する若い娘》です。本作は日本がベトナムから撤退後のフランスの植民下にあった時代の作品ですが、作風に似たようなニュアンスを感じませんか。実は近代美術草創期を担ったベトナム人美術家たちが、新たな時代にふさわしい祖国を絵画を描くにあたり、近代日本美術の影響があったとも言われてます。
※本作は福岡アジア美術館で開催中の「ベトナム、記憶の風景」に展示されています。
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石崎光瑤の≪熱国妍春≫。本作は石崎が1916年から17年にかけてインドを旅行し、その成果を反映。第12回文展の特選を受賞しました。本作のほか、仏教が興ったインドという異国に強い憧れを抱いていた、横山大観や堅山南風の作品等が紹介されています。
「南国」への憧れは戦後にも続いていきます。こちらは横尾忠則による連作「聖シャンバラ」。本作の制作段階ではインドに憧れを持ってはいたものの、実際にはインドを訪れていなかったそうですが、三島由紀夫に「インドに日本文化の源流があるのでは」と背中を押され、篠山紀信らと1974年にインドを訪問。「おそらく、僕の人生の後半生における創作の霊感の源泉になるだろう」という言葉を残しています。
本展覧会を企画した福岡市美術館学芸員のラワンチャイクン寿子さんは、「明治以降の近代日本美術は、学ぶべきモデルとしての西洋文化(西)と、その対抗軸として、自らのルーツである東洋文化(東)のいずれかに軸足をおいて紹介されることが多い。今回は「西」でもなく、「東」でもない軸線として、創作の動機やインスピレーションを「南国」に求めた作家や作品を一堂に集めた」と展覧会の目的を語っていただきました。
日本近代美術において、絶えず夢と発見の地として多くの画家にインスピレーションを与えた「南国」をテーマに掲げたこの展覧会はあなたの好奇心を捉えて離さないことでしょう。展覧会は11月24日(月・休)まで。
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■特別展「珠玉の近代絵画-「南国」を描く。 ■日時:2025年10月11(土)~11月24日(月) 09:30〜17:30※入館は閉館の30分前まで (10月の金・土曜日は9:30~20:00) 休館日 毎週月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)※10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)、11月24日(月・休)は開館 ■会場:福岡市美術館(福岡市中央区大濠公園1-6)
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