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福岡ゆかりの黒田侯爵家の「宝」約140点が勢揃い! 江戸から明治、大正、昭和――変わり続けた「家宝」の近代史をたどる【レポート】

2023/10/12 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 福岡の歴史を語る上でかかせない黒田家。
 本展は、初代藩主・黒田長政没後400年にちなみ、江戸から明治、大正、昭和と激動の時代を経て、かたちを変えてきた「家宝」について、その文物と歴史を紹介する展覧会です。

 冒頭を飾るのは、19世紀半ばから20世紀初頭にかけて、3世代に渡り黒田家の当主を務めてきた長知(ながとも)(最後の殿様)、長成(ながしげ)(最初の侯爵)、長禮(ながみち) (最後の侯爵)の紹介です。

 展示室に入り、まず目に飛び込んでくるのが、甲冑と大礼服。
 

(左)「黒漆塗桃形大水牛脇立兜・紺糸威五枚胴具足・小具足付」 江戸時代(19世紀)
(右)「宮内官奏任官大礼服」 明治17-21(1884-1888)年 ともに福岡博物館所蔵

 

 戦国時代を彷彿とさせる武具と絢爛豪華な洋装は、いずれも「最後の殿様」であった黒田長知の着用したもの。ひとりの人物の持ちものに、新旧体制の振り幅の大きさを感じさせるような象徴的な展示品です。
 

(右) 「大礼服」近代(20世紀) 福岡市博物館所蔵
(左下)「鳥類原色大図説 第1巻-第3巻」昭和12年(1937) 福岡県立図書館所蔵
それぞれの時代を象徴する展示物にも、それぞれの当主の個性が光っている

 さっそく黒田家の「宝」に目を向けていきましょう。
 江戸時代の「宝」とはどのようなものだったのでしょうか。ここでは、黒田如水(孝高、官兵衛)、長政親子、第2代藩主忠之にゆかりのある文書、武具等の「重宝」が紹介されています。

 

(右)「朱塗合子形兜・黒糸威五枚胴具足・小具足付」兜:貞享5年(1688)、胴:桃山時代(16世紀)
国宝「刀 名物「圧切長谷部」」南北朝時代 福岡市博物館所蔵
黒田如水(孝高、官兵衛)が織田信長から拝領したとされるもの

 

 明治時代には、江戸時代からの重宝を引き継ぎながら、新たに財産の整理・管理が行われるようになります。黒田侯爵家における「家宝」の誕生です。
 重要度に応じて「第一家宝」と「第二家宝」と新たに設定されたものの中には、江戸時代の「重宝」には含まれていなかった掛軸や茶道具等の美術品も含まれていました。

ずらりと並ぶ黒田家の歴代当主の掛軸


 

甲冑を360°どこからも観ることができるのも本展の醍醐味

 

 その後、時世の影響を受け手放された「宝」がある一方で、明治時代以降、新しく名品として加わった「宝」がある等、黒田侯爵家の家宝は、時代に応じかたちを変えながら現在まで引き継がれています。
 1978年、黒田侯爵家の貴重なコレクションは、黒田家から福岡市に寄贈されました(一部は寄託。購入)。

 黒田家の本邸が福岡の地を離れ、東京・赤坂に移ったのは今から150年以上も前になりますが、本展では、それ以降、現代まで続く福岡と黒田家のつながりも紹介されています。

 

本展を担当学芸員・野島義敬さんによるギャラリートークのひとこま。
展示品を巡りながら、それぞれの展示物、黒田侯爵家にまつわるストーリーをたどることができる

 会期中には、本展担当学芸員・野島義敬氏による関連講座「黒田家の家宝」(10/15(日)13:30~)、毎週水曜開催のギャラリートーク(各回14:00~)も開かれます(ともに当日参加可能)。
 「黒田侯爵家の名品」というストーリーをぜひ見に、聞きに行ってみてください。
詳しくはホームページで。


リンク先:
特別展 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史 | 特別展示 | 展示・体験学習室 | 福岡市博物館 (city.fukuoka.jp)

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