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写実絵画を目の前で見る楽しみ ホキ美術館コレクションが佐賀県立美術館で開幕

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アルトネ編集部
2025/03/24
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 世界でもまれな写実絵画専門美術館として知られるホキ美術館(千葉県)のコレクションが揃う展覧会が、3月20日(木・祝)、佐賀県立美術館で開幕しました。

 これまで過去2回写実絵画の展覧会を開催し、今回が3回目となる本展では、写実界を牽引する森本草介氏(1937~2015)、野田弘志氏(1936~)、小尾修氏(1965~)、島村信之氏(1965~2024)の4人の作品を中心に、60点以上の作品が展示されています。

 会場に入りまず目に飛び込んでくるのは、森本草介氏の作品です。

《アンティ-ク・ドール》 森本草介 2012

 生前「僕の眼にはセピア色のレンズが入っている」とおっしゃっていたという森本氏。人物画、風景画もがセピア色に染められ、柔らかな絵肌の繊細な表現とともに時がとまったかのような静謐さを感じさせます。

《みちのく 早春》 森本草介 2004

 続いて、野田弘志氏の作品を目前し印象づけられるのは、塗り重ねられた絵具の層の存在感。接近したときにゴツゴツ・ざらざらと見えるものが、少し離れて見たときに、きらめきを放ち、より「見たまま」を感じさせる――絵画作品を目の前にしているからこそ実感できる鑑賞体験と言えるでしょう。

《聖なるものTHE-Ⅳ》 野田弘志 2013

 

《「崇高なるもの」OP.3 野田弘志 2012》

 小尾修氏の作品は、時を経たモチーフの傷や味わいが描かれることで、ある種のリアリティが浮かびあがる、力強さを感じさせる作品です。日常の中で作家が見出した美しさを絵として刻みつけ、ドラマチックに伝えてくれます。
 

《咆哮》 小尾修 2021

 

《7:30am》 小尾修 2021

 島村信之氏は光を追求してきた作家です。白い世界に横たわる裸婦や、標本さながらに描かれた昆虫は、自然光の中でその姿かたちをつまびらかに見せるようでいて、どこか透明な、ある神秘性をも感じさせます。写実的でありながらも、絵画にしかできないことを目で見、確かめる機会となりました。

《晄》 島村信之 2020

 

(左)《オオコノハムシ-擬態-》 島村信之 2014
(右)《ニジイロクワガタ-メタリック-》 島村信之 2015

 ホキ美術館館長の保木博子氏は「ひとつの作品を描くのに4~5カ月という時間が費やされている写実絵画の作品には、画家の眼で見て、描き続けたパーソナルな思想も映し出されている」ことを伝えてくれました。

 何が描かれているかがはっきりとわかる写実絵画だからこそ、表現することができる画家のこだわりや美意識、そして、描くことのシンプルな凄みに溢れた展覧会です。ぜひご覧ください。

 

写実絵画の精鋭展

 

佐賀県立美術館にて5月18日(日)まで開催中。会期中にギャラリートークや公開制作などのワークショップも開催される。
展覧会詳細はこちら
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