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五郎丸選手のあのポーズは大威徳明王がルーツ!?ラグビーx醍醐寺展の魅力に迫る【レポート】

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伊勢田美保
2019/03/06
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2月16日、九州国立博物館で特別展「京都・醍醐寺−真言密教の宇宙」に関連したイベントが行われました。『ニッポンの力』と題したトークショーのスペシャルゲストは、9月に行われる「ラグビーワールドカップ2019」のPRで来られたラグビーの五郎丸歩選手。当日は約300人の五郎丸ファン、醍醐寺ファンが詰めかけました。BUTCHさんを進行役に五郎丸さん、本展担当学芸員の森實久美子さんも交え、ラグビーと醍醐寺展、それぞれの魅力が語られました。今回はその模様をたっぷりとご紹介します。

280席のミュージアムホールは満席で、入り口付近に立ち見も出るほどの盛況ぶり!

 

BUTCHさん(以下、BUTCH) 今日は醍醐寺展の魅力をお伝えしていきますが、スペシャルゲストに五郎丸選手もお迎えします。この2つがどのように結びついていくのか。最後、皆さんの中に「あ、これもニッポンの力だな」という風に感じていただけたらなと思っております。

まずは醍醐寺のことについて知っていただこうということで、森實さん、特別展についてお伺いできますか。

 

森實さん(以下、森實) はい。京都の南東の山科盆地に位置する醍醐寺ですが、その歴史は1100年以上ありまして、始まりは平安時代。875年に遡ります。真言密教を中国から伝えた空海の孫弟子にあたる聖宝という方が開いたお寺です。今回はそちらの醍醐寺がお持ちの約15万点のご寺宝から、104件選りすぐりご紹介させていただいています。まず今回のポスターでも取り上げている、《薬師如来および両脇侍像(りょうきょうじぞう)》という国宝。非常に重厚感のあるお像で、平安時代の彫刻の中でも非常に名高いお像です。

国宝《薬師如来および両脇侍像》を見ながらトークを進めるBUTCHさんと森實さん

 

BUTCH これは実際ご覧になった方いらっしゃいますか。あ、大多数の方にご覧いただいていますね。まだの方はぜひ、ご覧になってみてください。

 

森實 もう一点、こちらは絵画ですが、国宝の《五大尊像》という絵になります。「五大明王」とも言いまして、その名の通り、5人の明王たちによって構成されています。中心に見えますのが、皆さんよくご存知の不動明王。その周りに東西南北を守る4人の明王たちが従う場面になります。

こちらも国宝の《五大尊像》(展示期間~2月24日)

BUTCH この時代までよくぞ残っていてくれたという一つですが、できた当時はこの赤色ももっと赤くて、黄金ももっと黄金だったんでしょうね。

 

森實 やはり800年経っていますので、色が落ちてしまっていますが、鮮烈な赤が残っていて、当時の方たちの目を驚かせたであろう名残を今も見せてくれています。

 

BUTCH 我々はテレビや映画、いろんな映像を通して、「お〜怖い」とか、「すごい」と感じていますが、この時代にあってこれだけのお像というのは、僕らの想像以上にすごいものだったんだろうなという気がしますね。

 

森實 確かに私たちは目に触れることも多いですけども、非常に怪異な恐ろしい顔をした像ですし、なおかつ2mもの大きな作品で、これを前にして祈りがささげられた、当時の方たちの切実な思いが偲ばれます。

 

――――――――――――――――――――

スペシャルゲスト、五郎丸選手のプロフィールが紹介され、いよいよご本人が登場。BUTCHさんの「大きいですね、身長体重を教えてください」との問いに、五郎丸さんからは「185cmの100kgです」との回答。体力を維持するため、食べるのもトレーニングの一環であること。福岡に帰ってきたら、「浜勝」によく行き、おひつでご飯を食べるとの言葉に会場に笑いとどよめきが。

BUTCH「浜勝の人にしてみればね、来たよ〜って。釜炊いてる?って。ゴマはどのくらいの量使うんですか?」五郎丸さん(以下、五郎丸)「スプーンは使わずにジャーっとやっちゃいます」BUTCH「豪快!(笑)」

BUTCH 実はさきほど森實さんと五郎丸選手と一緒に展示を拝見させていただいて。贅沢な時間だったんですよ。学芸員の解説付きで回るんですから、完璧でしたね。仏教はもちろん日本発祥ではありませんが、いろんな人が経典を持ち込んできて、時の政権や権力者との絡みで翻弄されていった。森實さん、醍醐寺の魅力を一言で言うとするとどういうところにあると思いますか?

 

森實 そうですね、本当に当時の人々にとっての心の支え。私たちは今、病気になれば薬を飲んで手術をして治るわけですが、当時は祈りにすがっていた。そういう真摯な気持ちを支えたのが、醍醐寺だったと思います。

 

BUTCH 権力者にとっても一般の人たちにとっても、精神的な、ものすごく大事な祈りの対象だったんですね。それを醍醐寺の秘宝を通して感じることができると。ところで五郎丸選手の場合は、ゲーム中とかいろんな場面で、「やっベーな」という時にはやっぱり祈ったりするものですか?

 

五郎丸 そうですね、キック打ってる時は、祈ってますからね(五郎丸ポーズ)。いや、冗談です。

 

(会場笑)          

 

BUTCH 冗談ですか?でも鍛錬を積んだ五郎丸選手のキックを、我々ファンは祈る思いで見ているわけですから、醍醐寺の秘宝と同じですね。やはり実際に見るというのはスポーツ観戦にも通じるところがあると思います。全くラグビーがわからない人のために、ラグビーを生で観戦する魅力、ここを見るとラグビーは最高に面白いってところを教えてもらえますか。

五郎丸「戦っていて疲れた時や心が折れそうになった時は、同じ状況でも走ってるチームに力をもらっています」

 

五郎丸 生身同士のぶつかり合いで、人のためチームのために犠牲になる。なおかつ見返りを求めない。そういうところにスポーツの良さ、ラグビーの良さがあると思います。スタジアムで生で見ていただくと、選手同士のぶつかる音が聞こえるんです。これは、テレビのマイクでは拾えないんですよね。そこはすごく面白いと思います。

 

BUTCH どうしても見に行けない人がテレビ観戦する場合ポイントになるところ、ここを見ると最高に楽しめるよっていうところはありますか。

初心者へのラグビー観戦の楽しみ方を教えてくれる五郎丸さん

五郎丸 ラグビーは、体をぶつけ合って力で戦ってると思いきや、意外と頭を使って戦略的に戦っています。球技の中では、ピッチに立ってる人数が一番多いスポーツでもあります。15人それぞれに役割があって、誰か一人でも仕事しないとトライが取れないんです。太っていて強く押せる選手もいれば、体はちっちゃいけど足は速くてトライが取れる選手もいる。それぞれに役割があるのは、ある意味社会の縮図だな、と思います。

 

BUTCH 社会の縮図か。そういう風に見ると、スポーツは楽しいですね。

 

五郎丸 そうですね。やってる人たちはかなりきついですけど。でもそれを乗り越えることでまた違う世界が見えるという、そういった良さもあります。

 

BUTCH 今回はいよいよ悲願の、日本でラグビーのワールドカップが開催されるということで。「オリンピック」「サッカーのワールドカップ」そして「ラグビーのワールドカップ」、これが『世界三大スポーツ大会』といわれているんですが、今までは強豪ニュージーランドやヨーロッパでの開催はよくありましたが、今回は日本開催。これは日本人選手としては燃えるでしょう?

 

五郎丸 はい。でもこれはもう日本だけじゃなく、実はアジアのチャレンジでもあるんです。これからアジア人口もどんどん増えて、世界の中心になっていくだろうと思います。日本だけじゃなく、世界のラグビーが新たなチャレンジのステージに入ったということです。

五郎丸「ラグビーは無差別級の競技。日本人は、僕もそうだけど、外国人を見ただけで負けるって思っていたけど、そういったものを1から覆してくれる可能性のあるスポーツじゃないかな」

BUTCH やっぱり思い出すのは、2015年の対南アフリカ戦の勝利。しかも最後、同点狙いじゃなくて逆転狙いに行った時のあの興奮をまだ覚えている方もいると思いますが、そういう意味で非常に期待したい。まずは何といっても生のぶつかり合いの、バチーン!というあの迫力を、体験していただきたいと思います。

 

―――――――――――――――――――

話は再び醍醐寺展に。1100年以上も前の文化財、国宝と呼ばれる貴重な文化財まで展示されている本展。作品を通して、造られた方の思いや美しい技に学ぶことが語られました。

 

森實 こうして間近で展示させていただくと、その一つ一つの作品にかけた時間や労力、重み、そういったものが伝わってきます。それはさっきのラグビーの試合と一緒で、やっぱり生で見ないとなかなか写真だけでは伝わらないですね。

 

BUTCH 特に金の細工物なんかは、隅々までびっくりしますよね。

 

森實 息を呑むような大作業をしたんだろうなと。生だからこそわかると思います。

 

BUTCH 彫刻の世界も、時代時代で流行り廃りだったり、作風の違いもあると思うんですが、改めて絶対見ていただきたいのは、やはり先ほどの御本尊(薬師如来)ですね。

 

森實 あれは本当に、展示室で手を合わせていらっしゃる方がいるんですね。このお像を前にして、自然とそういう気持ちが湧いてらっしゃるんだろうなと。そういう方を見ると、ここまでお運びして、展示させていただいてよかったなと思います。

五大明王についても紹介させてください。五大明王像という、さっきご紹介した絵と同じ5人メンバーについてです。

スクリーンの《五大明王像》を見ながら

森實 こちらは木の彫刻でできています。手足がいっぱいあって、怒りの表情をしている、これこそが、空海が中国から持って帰ってきたお像の特徴です。今でも「八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍」と言いますが、まさにこれ。顔が左右に付いていたりする姿から来た言葉です。展示室では、後ろ姿は見えませんが、顔の様子など動き出しそうなくらい生き生きとした仏像なので、いろんな角度から見ていただきたいです。

 

BUTCH 炎がまた迫力ありますね。

 

森實 そうですね。実は私、この牛に乗っている《大威徳明王像》の手が、ずっと五郎丸選手のルーティンのポーズに似ているな〜と思って。これをもとに五郎丸選手は精神統一をしてるんじゃないかなと思っているんですが。

 

五郎丸 ばれました?(笑)

 

(会場笑)

これが噂の《大威徳明王像》。確かに五郎丸ポーズにそっくりです

BUTCH でもまさにその通りですよね。ちょうどポーズを決めて、蹴る足元を確認する感じで。まさかこれを見て今回、五郎丸選手を呼ぼうと決められたわけじゃないですよね?

 

森實 (笑)。

 

BUTCH (笑)。さあ、今回のイベントのタイトルにもなっている「ニッポンの力」にちなんだ質問もさせていただきたいと思います。五郎丸選手は世界の強豪相手に国内外で活躍されていますが、そんな五郎丸選手から見て、日本の皆さんに大事にしてほしいな〜と思う力というのは、何かありますか。

 

五郎丸 はい。これからワールドカップがきて、来年オリンピックがきて、その後関西マスターズの大会が開かれてと、世界の有名なイベントが続きます。そういった中で、日本人とは何なのかと自分自身に問いてほしいなと思います。僕も日本代表になってワールドカップに出場、国家を歌い日本国旗を掲げるまではそんなに意識しませんでしたが、あの経験を経て海外にチャレンジしたら、日本人が強いところってどこだろう、と考える機会が増えました。

 

BUTCH ラグビーというスポーツ上、自分を犠牲にする力、それが束になった時の力だったりは、魅力として感じていたいですね。

 

五郎丸 そうですね、たぶんこれは日本人にしかない感覚です。プレー以外でも、私生活の中でしんどいことを、自分を犠牲にしてできるという感覚は意外と日本人にしかいないんじゃないかと、海外に出て思いました。

約40分のトークイベント中、会場は終始和やかなムードに包まれました

―――――――――――――――――――

最後に会場のみなさんへのメッセージとして、「実際に見ないとわからないことが本当にたくさんある。大きさや質感や迫力。会場に足を運んでみていただけたらうれしい」と森實さん。

 

またBUSCHさんは、豊臣秀吉が醍醐寺で開いた花見の展示スペースを例に出し、

「醍醐寺は戦国時代ボロボロになりましたが、最後に秀吉がもう一回力を入れて、大きなうねりの中で生き残った。権力者のバックアップがあったからこその素晴らしい作品がいっぱい残っています。もうすぐ桜が咲く季節ですし、展示を見ながらいにしえに思いを馳せて、秋口になったらラグビーのワールドカップに思いを馳せていただいて。古きと、今一番熱いスポーツの両方を楽しんでいただければと思います」とコメント。

 

そして五郎丸さんからは、

「このような機会をいただき、ありがとうございます。今年はワールドカップが日本にやってきます。福岡でも開催されますので、ぜひ観戦よろしくお願いします」との熱いメッセージが送られました。

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