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フランス絵画の魅力に迫る!高階秀爾 講演会【ミニレポート】

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秋吉真由美
2020/03/16
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※九州国立博物館は2月27日(木)から当面の間臨時休館

 九州国立博物館(福岡県太宰府市)で開催中の特別展「フランス絵画の精華」。ルーヴル美術館やヴェルサイユ宮殿美術館、東京富士美術館などが所蔵する油彩画やデッサンを一堂に展示し、17世紀から3世紀にわたるフランス絵画の変遷を紹介しています。

 同展の開催を記念して2月9日、美術評論家・美術史家で大原美術館の館長を務める高階秀爾さんによる講演会「フランス絵画の栄光 - 古典主義からロマン主義まで」が行われました。フランス絵画の“楽しみ方”が分かる講演会の様子をレポートします。

 

講演会当日のようす

 

 「今回展示される作品は、印象派が生まれる前のフランス絵画。この時代の作品は、馴染みが薄く分かりにくい部分がありますが、大変豊かな作品が多いです」と高階さん。いくつか例を挙げながら解説していきます。

 まずは、フランス美術の基礎を築いたとされるニコラ・プッサンの自画像。

 

ニコラ・プッサン 《55歳の自画像》
1649年 ベルリン国立絵画館
©Staatliche Museen zu Berlin, Gemäldegalerie

 

 「プッサンは、フランスでとても重要な作家です。イタリアで長く生活しながら、フランスの友人たちの注文を受けて作品を描いていました。この自画像は、本を持っていますね。デッサンもするし、本も読む。知的な性格であったことを自画像に盛り込んでいます。何も知らないとただのおじさんですが(笑)、こんな人だったんだ~という人となりが分かると、絵に対する親しみも湧くと思います」

ニコラ・プッサン 《コリオラヌスに哀訴する妻と母》
1652-1653年頃 ニコラ・プッサン美術館蔵
©Christophe Deronne

 

 「中央右のコリオラヌスに対して、青い服を着た母と子どもを抱えた妻がローマの攻撃に向かう彼を止めている場面を描いています。必死に止めている女性たちの身振りと表情も印象的ですが、コリオラヌスも戦に行くのをやめると処刑されることが分かっている。彼の表情からはそんな複雑な心情も見られます。一番左側の人物には、ローマのシンボルである狼が兜に飾られていることで、この舞台がローマだと分かる。いろんなヒントでローマの歴史を伝えている興味深い作品です。このように細かく知ると、フランス絵画の豊かさが非常に分かると思います。物語絵画は、読み解くのも楽しいですよ」

 

作品の画像を使って解説する高階氏


 

ジャック・ブランシャール 《バッカナール》
1636年 ナンシー美術館
©Ville de Nancy-P.Buren


  「お酒の神様、バッコスの祭儀バッカナール。お酒はぶどう酒ですから、子どもたちがぶどうを獲っていたりする、楽しく飲んでいる酒盛りの情景を描いた作品です」

フィリップ・ド・シャンパーニュ 《キリストとサマリアの女》
1648年 カーン美術館
Musée des Beaux-Arts de Caen

 
 「ユダヤからガリラヤに向かうキリストがサマリアの街にあった井戸のそばで休憩し、サマリアの女性に水を一杯くれないかと頼みます。敵対するユダヤ人が自分に話しかけるのか、と女性は驚いている場面です。しかし、話を聞いてみると、イエス様だと分かるという。シャンパーニュという作家は、娘が修道院に入っていたりして、宗教的なテーマを良く描いています」

 「楕円形の中に描かれた、イエス様がまとう青い服と女性の黄色い服の対比が素晴らしい。ブルーの顔料は、当時は手に入りにくいラピスラズリという非常に貴重な鉱石をつぶして作っています。フェルメールの作品でも良くブルーが使われていますね。同じラピスラズリを使っても画家によって雰囲気が変わる。そんな見方も面白いです」

ジャン=アントワーヌ・ヴァトー 《ヴェネチアの宴》
1718-1719年頃 エジンバラ、スコットランド・ナショナル・ギャラリー
National Galleries of Scotland. Bequest of Lady Murray of Henderland 1861  



 「男女が向き合い、踊ろうとしている場面。よく見ると男女とも片足を前に出しています。でも周囲は、二人に注目せずに自由に楽しんでいる。自然の中での会話やダンス、このような作品は『雅宴画』と呼ばれています」

エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ・ルブラン
《ポリニャック公爵夫人、ガブリエル・ヨランド・クロード・マルチーヌ・ド・ポラストロン》
1782年、油彩、カンヴァス、92.2 cm×73.3cm、ヴェルサイユ宮殿美術館
Photo©RMN-Grand Palais(Château de Versailles)/Gérard Blot/distributed by AMF


 「この画家は、王妃マリー=アントワネットの友人です。とても仲が良かったようで、フランス王家の養育係を務めたポリニャック公爵夫人の肖像画を何度も書いています。このようなエピソードを知るとより深く楽しめます」

 そのほかにも、作品一つ一つに丁寧な解説があり、最後に「このように作品をゆっくり見ていただくとフランス絵画の優れた部分、豊かさや喜びを感じられると思います」と話し、講演会を締めくくりました。

 デッサンも数多く展示していますが、「見事な作品ばかり。焼けやすい紙に描かれていますのでなかなか長い間展示できない。これだけの量が一堂に会するのも貴重です」との補足も。この貴重な機会をお見逃しなく。

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