ルネ・ユイグのまなざし
フランス絵画の精華
大様式の形成と変容
2020/02/04(火) 〜 2020/03/29(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2020/03/23 |
池田理代子さんの「ベルサイユのばら」に、実在の画家エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ・ルブランの挿話がある。フランス王妃マリー・アントワネットの肖像画制作中にルブランが落とした画材を王妃が拾う場面だ。似たエピソードは画家の回想録にもあり、事実に近いらしい。画家は王妃と同年齢。フランス革命の動乱が運命を分かつまで10年余の親交を結び、20点以上の肖像画を手掛けている。
ルブランが描いた王妃の絵は革命200年の1989年、福岡市博物館で展示されている。2人が23歳の時の大作で、若い力にあふれていた。
ルブランはフランス画壇の頂点である王立アカデミーの数少ない女性会員として知られた。革命で身に危険が迫ると、9歳の一人娘を連れて亡命。欧州各国の貴族の肖像画を描いて暮らしを立て、娘を育てた。パリに残りルブランの稼ぎをあてにした夫とは離婚。シングルマザーのはしりともなった。
新型コロナウイルスの影響で臨時休館中だが、九州国立博物館(福岡県太宰府市)の特別展はルブランの作品3点を展示する。その中の「ユスーポフ公爵夫人」は離婚の3年後、娘が17歳に成長した頃にロシアで描いた作品。女手一つで娘を育てる画家の、隙のない筆遣いを見て取れる。
だが娘は20歳の年、母が反対する結婚を強行して不幸な結末を迎えたようだ。娘は39歳の若さで先立ち、ルブランの後半生に痛みを残した。
一方、アントワネットは4人の子に恵まれた。しかし病により1人を1歳未満で、1人を7歳で亡くし、さらに革命政権によって8歳の王子と生き別れにされた。王妃が断頭台の露と消えた後、長女は生き永らえたが、引き離された幼い王子は冷遇に耐えられず、10歳で落命している。
王妃と画家は母として、この上ない苦痛を味わったわけだ。それを知ると、冒頭に示した若き日の友愛の場面は哀切をもって感じられる。
王妃の肖像画が福岡に来た31年前の展覧会の名称は「フランス絵画の精華」。開催経緯が無関係であるにもかかわらず、現在の特別展と偶然にも同名であった。(大串誠寿)=3月7日付西日本新聞朝刊に掲載=
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