ルネ・ユイグのまなざし
フランス絵画の精華
大様式の形成と変容
2020/02/04(火) 〜 2020/03/29(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2020/02/21 |
秋の流行を決めるファッションイベントが24日から始まる。パリ・コレクションだ。縁遠い世界に感じるが、私たちも気付かないうちに大きな服飾文化のモード(流行)に巻き込まれている。かつて本革の安価な代用品と見られた合成皮革が、今はおしゃれな素材として通用していることに心当たりがあるだろう。
18世紀の絵画にも、現在に連なる「パリ発」モードを見ることができる。「ポリニャック公爵夫人」(ルブラン作)。ドレスは絹製という常識を覆し、当時は下着とみなされた木綿服で肖像画に収まった。
とっぴだったはずの「下着ドレス」が受け入れられたのはフランス王妃マリー・アントワネットが愛用したからだ。その服をデザインしたのはローズ・ベルタン。ファッションデザイナーの祖として教科書に名が載る。王妃の衣装を約19年にわたり手掛けた。
その影響力はスウェーデンやロシアを含む欧州一円に及んだ。ベルタンの服は高額で売れた。スペインとポルトガル王室の婚礼衣装を担当した際の請求額は外交問題になりかけ、時のフランス外相が値切りの仲介に乗り出した。「フランスの国益において、我が国のファッションや布地をご利用になる外国の宮廷に対しては過度に高額な請求はせず(中略)ご尽力いただきたい」。(ミシェル・サポリ、北浦春香訳「ローズ・ベルタン」白水社)
贅(ぜい)を尽くしたベルタンの絹製ドレスで欧州のモードを先導した王妃だったが、妊娠したころから服を簡素化し、楽な木綿服を好み始める。ベルタンは「シュミーズ・ア・ラ・レーヌ(王妃風下着ドレス)」を仕立てた。
この様式はフランス革命勃発後「エンパイア・スタイル(帝政様式)」というゆったりした装束に展開してブルジョア層のモードとなり、現代の服装の祖型となった。それがこじつけでないことは、18世紀のこの肖像画が現代の絵だと言ってもさほど違和感がないことから理解されよう。
この絵が描かれたのは天明の大飢饉(だいききん)の年。私たちにとって江戸時代は遠いが、この絵の装束は身近に感じる。モードの影響力を実感できる。 (大串誠寿)=2月14日西日本新聞朝刊に掲載=
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