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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 35

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山出淳也
2021/04/06
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りんごの木が覚えていること

 山口県・島根県内七つの市町で開催する事業「山口ゆめ回廊博覧会」のプロデューサーを仰せつかっている。

 昨年夏に就任し、それから何度も訪れリサーチを重ねてきた。2021年7月から12月末まで、たくさんのイベントを開催し圏域の魅力をPRするという計画だった。しかしコロナ禍の現在、当初の予定どおりに順調に進むわけもない。今すべきこととは何だろうと考える日々が続いている。

 博覧会の目玉となる企画は、特別な場所で開催するアートと食がコラボする事業。今年はプレ開催として、20人程度の招待客が出演する動画を撮影した。来年の秋の実施に向けたプロモーションの一環だ。

 山口市の国宝・瑠璃光寺五重塔では、京都の料理家でありアーティストの船越雅代が圏域の自然環境や食材を研究し、浸透をテーマに特別な時間を提供する。

 宇部市の植物館を舞台に地元のシェフと協働したのは、「指輪ホテル」を主宰する劇作家の羊屋白玉。BEPPU PROJECTが最初の企画をお願いした方だ。植物から招待状を受け取った参加者は、夜の植物園に迷い込む。本来、物言わない彼ら植物(に扮(ふん)した役者)の話を聞きながら、施設内を歩き不思議な料理を味わう。そういう演出だ。

 りんごの木の下で、僕たちは最後の一皿をいただく。そこに、客に出すために用意していたカルバドスを飲み干してしまった植物たちが現れる。酔っぱらった彼らはりんごの木に話しかける。

 「ニュートンが万有引力の法則を発見した時の木みたいだね」。りんごの木は「僕はその時のりんごの木です!」と答える。「その頃のイギリスはペストが大流行していました。大学生のニュートンはステイホームということで実家に帰って、りんごが落ちるのを見たのです。それが世紀の大発見につながりました」

 心の中で想像力の灯が消えない限り、どんな時でも希望はある。そう感じて心が震えた。

 僕はその一皿を味わいながら、ある映画のことを思い出していた。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(12月24日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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