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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 33

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山出淳也
2021/03/30
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Action!

 数年前のある日、「障がいのある方の芸術活動について考える懇談会に参加してほしい」と大分県庁から電話がかかってきた。基本的に断る選択肢を持っていない僕は、軽い気持ちで参加することにした。

 しかし、その数回の懇談会は僕の目からたくさんのうろこを落とすことになった。特に奈良の「たんぽぽの家」を主宰する播磨靖夫さんとの出会いは、その後の僕のものの見方に大きく影響を与えていると思う。懇談会の本質的な内容を一言で言うならば、「誰にとっての“障がい”なのか」ということだった。

 その後、大分県から「障がい者の展覧会を企画してほしい」と依頼された。何か心の奥がもぞもぞしつつも引き受けた。

 だけど僕には、障がい者の芸術活動についての魅力や課題について語る知識はない。そこで、全国の芸術活動に熱心な福祉施設や組織を訪ね、話を聞くことから始めた。それから3年間、たくさんの方々に話を聞いた。

 その1人が、ナカノさんだ。彼の息子には知的障がいがあるが、装飾性豊かな焼き物を作る才能に恵まれている。地元ではちょっとした有名人だ。

 「生まれて少しして、息子の障がいに気がつきました。他の親と同じように悩み現実を受け入れるのに時間がかかりました。そのうち、彼に粘土を与えると、とても固執することに気がつきました。なるべく干渉せず好きな粘土遊びに没頭させました。そうするとだんだん面白いものを作り始め、今では展覧会にも出品するようになりました。現代では彼は障がい者と呼ばれます。しかし、装飾が施された土器を作ることが重要だった縄文時代に生まれたなら、彼はヒーローだったかもしれません。こんなことを考えるようになった息子に感謝しています」

 雑誌のようにデザインされたインタビュー内容を拡大し、美術館に展示した。タイトルは「Action!」と決めた。多様な個性が活(い)かされる社会を実現するための活動=Actionが生まれることを夢見て。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(12月22日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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