九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  【連載】山出淳也 アート、まちに出る 32

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 32

Thumb micro 6f691dcb2f
山出淳也
2021/03/25
LINE はてなブックマーク facebook Twitter

想像力の源泉を枯れさせない

 1年前には想像もできないほど、僕たちの日常は大きく変わった。

 「本当に大切なことってなんだろう」。そう自問する日々が続き、未来を思い描く力も湧いてこない。そんな状況で、今年の「in BEPPU」は開催すべきなのかと悩んできた。

 しかし、だからこそと思った。何が大切なことなのか、僕たちなりのメッセージを発しなければと考えた。今できる方法を見いだすことを前提に、今年も「in BEPPU」を実施することに決めた。

 僕たちが無くしてはならないものは、未来を思い描いたり、これまでと異なる可能性を考える「想像力」だと信じている。その源泉を絶対に枯らしてはいけない。その想(おも)いを共有するアーティスト梅田哲也とともに、プロジェクトを準備してきた。

 昨年、福岡市美術館で個展を開催した彼は、日常品を用いて動いたり光ったりする不思議な作品で知られる若手のホープ。ウイルスによって世界が大きく変化した今、彼も今何ができるのだろうと、もがいてきた。

 梅田君は今回、ほぼ初めての映像作品に挑戦した。役者は森山未來と満島ひかりなど。この作品は12月12日から来年の3月半ばまで、別府市内の映画館で3カ月にわたり上映される。それとともに、撮影が行われた市内各所を、特注のラジオのような端末を手に参加者に巡ってもらう計画だ。特定の地点に差し掛かると、端末から役者のセリフが流れてくる。役者が語る言葉によって、何の仕掛けもない目の前の風景に別の景色が浮かび上がる。それは、この場所が宿す記憶か。今とは別の起こりえたかもしれない選択肢か。はたまた未来の可能性を思い描くことなのか、全ては見る人に委ねられる。

 つまり、私たちの「想像力」によって目の前の風景を変えようとする試みだ。

 彼はよく「違うんですよ」と口にする。どこが違うのか、正確なことはいつも分からない。でもきっと、過去とは違う可能性を常に探してるんだろうなぁと感じている。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(12月21日付西日本新聞朝刊に掲載)=

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 5b7f61eb8b
終了間近

BASE GALLERY HAKATA
⻄川勝人個展「ノクターン」

2025/03/28(金) 〜 2025/05/20(火)
BASE GALLERY HAKATA

Thumb mini 8f4137e089
終了間近

The ma.macaron Cat Hotel

2025/05/03(土) 〜 2025/05/20(火)
合同会社書肆吾輩堂

Thumb mini 2fac2ea3db

福岡ミュージアムウィーク2025
初めてのベビーカーツアー

2025/05/21(水) 〜 2025/05/22(木)
福岡市美術館 コレクション展示室

Thumb mini 12f2a7f709

第35回九州産業⼤学美術館所蔵品+展 「巴里、ルオー、ザッキン。」 + 「元倉眞琴 集まって住む」関連イベント
アート・トーク「建築がもたらす共同体と孤独」

2025/05/24(土)
九州産業大学15号館102教室

Thumb mini 9ba6134a20

福岡ミュージアムウィーク2025
建築ツアー

2025/05/24(土)
福岡市美術館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 64aa1f0049
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 31

Thumb mini 70ebc405eb
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 30

Thumb mini 077e812d4d
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 29

Thumb mini 1a5839975c
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 28

Thumb mini 31558e8833
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 27

特集記事をもっと見る