九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  【連載】山出淳也 アート、まちに出る 45

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 45

Thumb micro 6f691dcb2f
山出淳也
2021/05/11
LINE はてなブックマーク facebook Twitter

チャレンジすること

 アーティストは表裏一体の二つの恐怖と戦っている。

 一つは、今作っている作品は駄作かもしれないという恐怖。評価が定まっていてもいなくても、彼らは常に後がない。崖の淵に立っているようなもので、一つでも駄作を生み出せば、次の仕事につながらないことをよくわかっている。

 もう一つ、それはチャレンジをしないこと。幸運なことに評価を得た作品が生まれ、それを繰り返しているうちに飽きられて、世間から「彼は終わった」とささやかれる。「自分にはもっと可能性があるはず」と信じたくても、ある程度固まった評価を逸脱する勇気が持てなくなる。

 新たな挑戦は怖いもの。初めてのことにはリスクが付きまとい、成功するかどうかわからない。「次の作品こそ最高傑作だ」と信じていても、「失敗したらどうしよう?」と頭をよぎる。

 企画する側も、うまくいかないくらいなら過去作の焼き直しでもと考え、依頼する。失敗すればマイナス査定になるかもと、ホームランを狙わずボールに当てにいく。前例踏襲って意識にも近いかもな。そうやって、全国どこでもアーティストのチャレンジを許す場所が少なくなっていく。

 チャレンジすることを諦めると、殻は破れない。殻が破れないと、自分が想像できる範囲のことにしか光は灯(とも)せない。自分の周りしか見えないと、一歩先やその向こう、つまり未来には向かえない。

 子育てに似てるなって思う。

 うまくいけばラッキーだ。でも失敗したら、チャレンジしたことを讃(たた)え、その失敗から学び、また進めばいい。学べることが多いほど、人はまた成長していけると思うから。

 チャレンジするためには、何が必要か?

 多分、挑戦しようとする勇気なんだろう。大きなことでも、小さなことでも、今の自分には、無理だって思うことでも、よく分からないってことでも、チャレンジしなければその先がどんな風景かなんて分からない。

 チャレンジすることは、尊い。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(1月14日付西日本新聞朝刊に掲載)=

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 2b7a4eaf87

第35回九州産業大学美術館所蔵品+展 「巴里、ルオー、ザッキン。」関連イベント
アート・トーク「モンパルナスのエコール・ド・パリ」

2025/04/25(金)
九州産業大学15号館101教室

Thumb mini a472c18760
終了間近

とりごえまり『名なしのこねこ』(アリス館刊)原画展

2025/04/05(土) 〜 2025/04/27(日)
合同会社書肆吾輩堂

Thumb mini 199fb1a74c

挂甲の武人 国宝指定50周年記念/九州国立博物館開館20周年記念/放送100年/朝日新聞西部本社発刊90周年記念
特別展「はにわ」

2025/01/21(火) 〜 2025/05/11(日)
九州国立博物館

Thumb mini fbef5d2295

映画「美術之鬼」完成披露上映会

2025/04/27(日)
北九州市立美術館 レクチャールーム

Thumb mini b371d37bba

吉田ヂロウ個展「グラファイト・ヴィジョンズ・アット・ハウス」

2025/04/23(水) 〜 2025/05/03(土)
HOUSE

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 53dd125440
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 44

Thumb mini 105ebc9778
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 43

Thumb mini 40f2e40e89
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 42

Thumb mini e1262e2e9d
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 41

Thumb mini d597e60329
連載記事

【連載】山出淳也 アート、まちに出る 40

特集記事をもっと見る