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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 2

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藤浩志
2017/09/23
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やわらかくあること

 僕は旅をしたことがない。しかし、毎週のように日本のどこかに、たまには海外にも出かけている。出かけた現場から次の現場へと数カ月単位ではしごをすることもある。最小限の着替えとモバイル端末を抱えて、ホテルの浴槽で毎日洗濯をしながら地域から地域へと移動する。まさかこんなに多くの地域と関わる生活になろうとは思ってもみなかった。これまで日本全国すべての都道府県に関わっているし、海外も15カ国ぐらいになる。
 美術に関わる仕事をしたかったわけでもない。でも「何か作りたい」というエネルギーを昇華するために、何かが作れそうな現場に誘われ、人に関わり、僕にしかできないことを実践しようとじっとその状況に向き合ってきた。たまたま美術大学に入学したことがきっかけで、美術のあり方に違和感を抱きずーっと考えるようになったのは事実。でも過去の美術のフレームの中のことをやろうとしたことはなく、その場所でできることをもやもやしながらも、手を動かし、体を動かして実践してきた。
 どこかの地域に関わる場合、自分から行くことはほとんどない。ほとんどは突然電話やメールをもらい誰かに頼まれて動く。初めて会う人だったり知り合いだったり。これといって断る理由もなく、やりたくないことをやるわけではないし、少なからず生活を支える収入になると思うのでありがたくひきうける。これまで経験したことのない何かができるかもしれないという期待を持ちつつ新しい現場に出向く。その時は楽しい。
 何をするのか、どうすればいいのかを考えるためにノートを持ち歩き、それに落書きをしながら状況を把握しようとしているうちに、これまで考えたこともなかった新しいイメージが芽吹く。やらねばならないことが、びょっと動きだす。それがこのうえなくいい。窮屈で、退屈に感じていた時間が、感動的なものに変わる瞬間に出くわしたりもする。時間の質が変化する。それがうれしい。
(美術家。挿絵も筆者)=6月30日西日本新聞朝刊に掲載=

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