江口寿史展
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藤浩志 2017/10/12 |
鴨川泳ぐ鯉のぼり
京都市立芸術大学の工芸科染織専攻に進学したのは、祖母が大島紬(つむぎ)の機織りで生計を立てていて、幼い頃そこでずっと遊んでいた記憶と無関係ではない。どの親戚の家でも当時は必ず誰かが大島紬の機織りをしていてその絣(かすり)織の図柄が出来る様子を眺めるのがとても好きだったし、小さな僕にとって織り機そのものが秘密基地のようで魅力的な遊び場だった。
大学では織ではなく臈纈(ろうけつ)染や友禅染の技法に興味を持ったが、そもそも高度な分業で何人もの職人の手によって作られる大島紬が染み付いていたので、学生一人がつくる程度の作品に、特に自分の作る作品の技術に納得や満足できるはずもなく、下手くそな自分の染織作品が嫌いだった。
そんなとき、友人の熱意もあり染織作品を鴨川の中に展示することを思いつく。染色物は濡(ぬ)れ色5倍と言われ、濡れているときは濃い色をしていても、乾かすと薄い色になり情けなくなる。鴨川の中に展示するのであれば、色も鮮やかなままだ。
空を自由に泳いでいるようでも実は繋(つな)がれていて、なんとも空虚で不自由な鯉(こい)のぼりの姿を自分の状況に重ね、せめて川の中を泳がせてやろうと5メートルの鯉のぼりを制作し、鴨川の中に展示することに決めた。
一匹5メートルの鯉のぼりを作るには裏表合計10メートルの布が必要となる。15匹作ることにし、一番安い木綿の生地を150メートル購入。5メートルごとに切断した布に友禅の筒描きの技法で鯉のぼりを描き、それをカラフルな色に染めた。強い流れの中に設置しても大丈夫なように頑丈に縫い合わせる。鴨川に流れるその姿を想像しつつ数カ月かけて作り続けた。
しかし問題はそこからだった。計画図を描き、企画書を制作し、鴨川の中の設置の許可をもらおうと思いふと立ち止まる。いったいどこに許可をとればいいいのかわからない。とりあえず鴨川の横の交番に入り、その企画書を当直の警官に見せて熱く語ってみた。
(美術家。挿絵も筆者)=7月12日西日本新聞朝刊に掲載=
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