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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 20

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藤浩志
2017/11/04
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権威にだまされない​

  ゴジラは巨大な怪獣ということになっている。巨大なので歩くことで街を破壊する。不思議と東京の街の有名建築物に向かって歩きそれを破壊する。地方に現れることもあるが、相当感度が高く、時代を象徴する重要な建築物に近づき破壊する。エネルギーが巨大なので厄介だ。もしゴジラがアリぐらいの大きさだったら誰にも気づかれず、人に踏み潰(つぶ)されて、おしまい。
 着ぐるみを作った当初はそんなことは考えなかったが、美術大学の大学院の学生だったので、活動についての論考やレポートを書くうちに、エネルギーを持て余す自分自身とゴジラの存在を重ね、そのゴジラと美術との関係について掘り下げるようになる。
 美術を象徴するゴジラの相手として中身が空っぽで、古くからあるがゆえに大切に思えてしまうハニワに着目する。穴が開いているだけの虚(うつ)ろな目と口、踊らされている雰囲気もまた重要な気がした。
 美術大学の大学院の修士課程で修士号を取得するためには、修士論文を書く代わりに修了制作とそれについての論考を提出し、審査されなければならない。通常は密室での審査会が想定されていたが、指導教員にお願いし、パフォーマンスも作品の一部だという理由で公開審査をイベント仕立てにしてしまう。
 大学院の指導教授が染めの作家、来野月乙先生だったこともあり、青海波(せいがいは)柄の60枚の屏風(びょうぶ)を染めた。そしてゴジラのパートナーとして僕が中に入るサイズの踊るハニワをコンクリートで制作し、ゴジラとハニワの結婚式のようなものを公開審査のパフォーマンスとして行った。タイトルは「6年間の結婚生活にもかかわらず決してあたたかな家庭を築くことはできませんでした。」。教授たちに皮肉たっぷりの祝辞を読み上げてもらおうと台本を渡したが、皆さんひどく怒り出し、不愉快な思いをさせてしまう。ごめんなさい。ゴジラとハニワの関係は愛のない虚(むな)しいものだった。卒業の時にハニワさんを大学の真ん中の池に沈めてこの2人はお別れした。(美術家。挿絵も筆者)=7月27日西日本新聞朝刊に掲載=

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