九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 23

【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 23

Thumb micro fa6a5588b3
藤浩志
2017/11/11
LINE はてなブックマーク facebook Twitter

伝えるとつながるの違い。​

 美術大学のような教育の現場にいると、専門家ぶった大人たちが若い人の表現に対して「コンセプトは何? よく伝わらないなぁ~」とつっこんでくる。コンセプト? 概念? くそくらえだと思う。美術にコンセプトが必要なのならば、僕は美術表現などしたくない。
 そもそも、言葉にできないから言葉以外の手法での表現を模索するのだ。認識や意識化する前に衝動があり、情動があるから手足を動かし、体を動かし、描き、奏で、呻(うめ)く。何かに触れようと手を伸ばす。背伸びもする。だからコンセプトに興味はない。しかし、表現の強度や説得力には興味がある。強さと深さがあれば心が動く。それが大切だと思う。
 そしてもうひとつの大きな問題は、表現が「何かを伝えようとしている」と思われている誤解にある。もちろん何かを伝えようとしている表現があってもいい。しかし伝える前の「つながろうとする」表現のほうが力強く、大切だと思っている。
 あるとき、伝えるという概念と、つながるという概念の発生には数百万年以上の時間差があったのではないかと考えるようになった。パプアニューギニアの儀式でのリズム、刺青(いれずみ)、顔や体へのペインティングは少なくとも先祖の霊とつながるためのものだと確信する。特に文字が発生する以前の様々な表現は何かにつながろうとするものだったのではないか。
 生まれたばかりの赤ちゃんが必死に手を伸ばし、指を動かしながら泣きだす。母親とつながろうとしている行為だと思うが、そこで「あかちゃんは何を伝えたいのだろう?」などと考えてる場合ではない。学生の多くは美術につながろうと絵を描く。あるいは唄(うた)い、奏で、踊り、描く行為の多くは周辺の誰かと、もしくは遠くの誰かと、空や大地の自然と、あるいは体内の遺伝子の中に存在する先祖の記憶とつながろうとする行為なのではないか。意識化されない無意識の、あるいは意識や認識を超えた衝動の行動、活動が大切だと信じている。(美術家。挿絵も筆者)=8月1日西日本新聞朝刊に掲載=

連載:地域と美術のすきまのやもり 一覧

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 0b28d371d8

松浦史料博物館開館70周年記念・九州国立博物館開館20周年記念特別展
平戸モノ語り ─松浦静山と熈の情熱

2026/01/20(火) 〜 2026/03/15(日)
九州国立博物館

Thumb mini 9a697c3afa

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト

2025/12/13(土) 〜 2026/03/08(日)
福岡市美術館

Thumb mini 57935b3824

企画展「浦川大志個展 スプリット・アイランド」 作家によるギャラリートーク

2026/02/07(土)
福岡市美術館 2階 近現代美術室B 企画展「浦川大志個展 スプリット・アイランド」展示室内

Thumb mini d88abbac2c
終了間近

創刊50周年記念
花とゆめ展 in 熊本

2025/12/06(土) 〜 2026/02/08(日)
熊本県立美術館

Thumb mini 16fffe5451
終了間近

「木梨憲武展-TOUCH」
SERENDIPITY-意味ある偶然

2025/12/20(土) 〜 2026/02/08(日)
佐賀県立美術館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Noimage
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<84> 【連載】開かれる世界 異常事態の渦中で 取り戻される日常

Thumb mini ba3135c76e
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<83> 【連載】コロナ禍の変化 国内の文化資源だけで 示唆に富んだ企画展も

Noimage
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<82> 【連載】ポスト・コロナの行方 深層には恐れや執着  「夢」の推移に注目を

Thumb mini c32a1e9f35
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<81> 【連載】政府の新指針 無意識の「風景」に マスクは定着したか

Noimage
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<80> 【連載】無形の「副反応」 震災の二次的被害同様 「関連死」はこれから?

特集記事をもっと見る