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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 30

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藤浩志
2017/11/28
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平面の概念がない

 生まれたての子どもはなんでも口にくわえようとする。吸い付くという本能的な行為によって母乳を得るからだと思う。しかし、危険なものも口に入れようとする。それを周辺の大人が判断し、行為を規制する。何が許されていて、何が許されるべきではないのかを判断するのは周辺にいる人だ。つまり、横にいる人が環境となって行為を決定する。
 子どもは成長の段階でさまざまな行為に出会い、その面白さに夢中になり、経験を重ねる。その経験を決定するのは周辺の環境ということだ。
 離乳食を食べるようになって、吸い付くことや食べることを覚えるようになると、食べ物をつぶしたり、たたいたり、ばらまいたりする行為に出会いその面白さを知る。しかし、多くの場合、その行為は規制される。あるいはこのお皿の上ならいいよと、許される場を与えられる。
 絵画や彫刻や音楽やダンスなど、あらゆる表現行為のことを考えるときに「許される場」が鍵となる。実は多くの表現行為は環境によって規制されているのだ。
 絵を描きたい人がいるとすると画用紙やクレヨン、あるいはキャンバスや絵の具を購入するという常識が日本にはある。それは許されている。本来お皿にケチャップやマヨネーズで描いてもいいと思うし、畳や襖(ふすま)に野菜や肉を押し付けながら描いてもいい。しかしそれが許されるかどうかは環境の問題だということだ。
 パプアニューギニア国立芸術学校で絵画の基礎を教えることになって、原初的な環境には平面というものがないことに気づく。キャンバスどころか、白い紙もない。もちろんクレヨンも絵の具もない。支持体は体や顔。そこに刺青(いれずみ)の技法や、泥などの顔料で描く。しかも自由に思いのままに描くことは許されていない。それぞれの家族の先祖の鳥やワニなどの霊につながるために、自分自身を変容させるために描く。自分の体に描き、音を出し、体を動かし、周辺の環境につながろうとするのだ。コスプレイヤーに近いのかな。(美術家。挿絵も筆者)=8月10日西日本新聞朝刊に掲載=

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