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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 33

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藤浩志
2017/12/05
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イメージが命を救う​

 パプアニューギニアには太平洋に面した島国だが、海流は島から遠ざかるように流れている。だから大航海時代、人々が海で移動を重ねてきた歴史の中で、海流の関係で誰も行き着かなかった。
 そんなパプアニューギニアの海でウインドサーフィンにはまっていた。かなり上達してくると、強風で波が立てばその上を飛ぶように滑りたくなる。いよいよあと一週間で日本に帰国する最後の日曜日、とてもいい強風だったので一人で海に出かけた。
 30分ぐらい沖に出たところに浅瀬の島のような不思議な場所があり、そこまで行こうと水筒を入れたリュックを背負い、強風の中を走り始める。1時間ぐらい経(た)ち、そろそろ帰らねばと思った瞬間、ボードとセールをつなぐジョイントがブチッとちぎれた。体ごとセールに持って行かれて荒れた海面に叩(たた)きつけられた。
 セールを巻き、センターフィンを外してカヌーのように漕(こ)いで陸にたどり着こうとするが海流は激しく、どう考えても沖に流されている。セールを張り直し、どうにかしようとするが、どうにもならない。途方に暮れて荒波の上で叫んでみたり、泣いてみたり。遭難している。恐怖がこみ上げてくる。夕暮れになり星空が広がりはじめる。諦めかけてボードの上に寝転がってみる。ふとなぜだか未来少年コナンのアニメーションのシーンが思い浮かぶ。コナンが足の指で飛行機の翼を挟むシーンだ。足の指で挟んでみるか! 荒波の上でセールを張り直し、ポールを親指と人さし指でぐぐっと挟んで踏ん張ってみた。わずかに風を受けて走り始めた。足が痛いのは当然。挟んだ足の指とセンターポールを紐(ひも)で結んで走り始める。2時間ぐらい走っただろうか。遠くに島影が見えてきた。
 イメージは人の行動を喚起させる。僕はあのアニメーションに救われたのだ。今生きているのは宮崎駿のおかげだと言ってもいい。災害の現場で必要なのはお金でも食料でもない。イメージ力だと確信した体験だった。(美術家。挿絵も筆者)=8月15日西日本新聞朝刊に掲載=

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