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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 34

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藤浩志
2017/12/07
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給料をもらいつつ素材を学ぶ

 偶然目にした雑誌の記事が僕の人生を変えてきた。青年海外協力隊の広告に魅かれてパプアニューギニアに行くことになったのも雑誌だったが、その後帰国して東京で会社勤めをすることになったきっかけもパプアニューギニア在住の日本人駐在員から流れてきた数カ月遅れの日本の週刊誌だった。
 その巻頭カラー10ページを使って紹介されていた会社が東京で急成長している土地開発業者(いわゆる地上げ屋)の破天荒な活動だったのだ。その社長がたまたま僕の遺伝子の源である奄美群島、喜界島の出身で、東京の文京区あたりを拠点に大規模な開発をする一方で、国際協力のような活動を行っていた。知り合いを辿(たど)ってコンタクトを取り、これまでの活動ファイルを抱えて飛び込みで社長への直接の面接をお願いし、社員として働かせてもらうことになった。
 当時は東京が地上げブームと呼ばれ、古い木造密集住宅が数多く取り壊されて再開発が行われているという情報を聞いていた。京都に暮らしていた頃、2階建ての一軒家を借りて暮らしていて、そこを離れる前に自宅を作品化して展覧会を行ったが、借家だったので天井や床、あるいは壁に穴をあけることもできなかったし、柱を削ることもできなかった。
 取り壊される前の家であれば自由にできるのではないかと考えたのだ。なかなか取り壊す前の家を借りることは難しいが、そこを所有している開発業者の社員になればそこに暮らすことができるかもしれないと思った。そして家を彫刻してみたかった。
 さらに土地の知識、不動産の権利や法律について学びたいというのもあった。絵を描くために画材のことを深く知らなければならないように、地域にイメージを描くとすれば、土地についての知識、権利関係や法律、流通についても知らなければならない。そしてあわよくば住居と給料と制作スタジオがついてくる。大発明だと思った。(美術家。挿絵も筆者)=8月16日西日本新聞朝刊に掲載=

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