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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 44

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藤浩志
2018/01/09
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2025蛙の池シンポジウム​

 行動の始まりには必ず特別な状況がある。状況が表現へのモチベーションを高め、エネルギーをぶつける瞬間がある。ヤモリでいうならば、高らかに啼(な)く瞬間だ。
 直径15メートルの円形で高さが15メートルある魅力的な空間がある青山スパイラルガーデンが、その空間を使った企画書審査の公募展をはじめた。企画書審査で上位10人が選ばれ、模型とプレゼンテーションの2次審査を経て大賞が決定するという。大賞1点にのみ制作費1000万円がスポンサーのシヤチハタから支給され、企画を実現できる。その第1回にお米1トンの砂漠の上を歩く101匹のヤセ犬のプランで応募した。上位10人の模型審査まで残ったが、徹夜明けのプレゼンテーションで見事に撃沈。大賞を逃した。
 その翌年。お米は虫だらけになったが、そこからおにぎりのカエルを作りたいというモチベーションが生まれ、蓮(はす)の葉増加の物語の「33年後に85億」という数字の大発見を主軸に、自分の子どもが(当時から)33年後の2025年にどのような地域社会で生活してゆくのかを予測するためのリサーチを行うプランを企画書にまとめて、今度はぎりぎり大賞を受賞した。
 直径15メートルの円形を閉じた池にたとえ、それが半分埋まっている状態の蓮の葉2048枚を制作。全く必要はないと思うがそこにおにぎりでできたカエルも204匹鎮座している。天井からは戦闘機と十字架を掛け合わせた3.5メートルほどある亜鉛メッキ板でできたオブジェが20機ほど落ちつつある危機迫る状況。その空間を取り囲むスロープには液晶モニターを置き、宇宙物理学者や森林問題NGO代表、エネルギー文化研究所所長、建築家、ソーラー発電開発者、国際協力総合研究所専門員などが33年後の地球環境について語っている。
 現在世界人口は74億まで増加し、気象変動、ごみ環境問題、温暖化、地震などの災害、不幸なことに当時の予測はことごとく現実のものになりつつある。どうする!?(美術家。挿絵も筆者)=2017年8月30日西日本新聞朝刊に掲載=

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