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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 46

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藤浩志
2018/01/13
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メディアガーデン​

 二中通という路面電車の停留所が鹿児島市内の中心部にある。数年前まで交通局前と呼ばれていたところ。交通局が移動したので名称が変わった。その電停の正面に父親がコンクリート造りの2階建ての自宅をつくったのが昭和30年代の初め。実はすぐ近くの別の場所に小さな土地を譲り受けて暮らしていたらしいが、現在の中洲通りを作るということで、移動させられてもらった土地らしい。
 40年経(た)つその家が廃虚のようになってしまい、僕も両親との関係が希薄になっていた時期だったので、その家に手を入れて、鹿児島での両親との活動を模索することにした。その家の床や壁、天井を外し、改装して作ったのがメディアガーデン・イイスペイスというカフェ。石段を2段上がった玄関を入るといきなり小さな池になっていて池の飛び石の上を歩いて店内に入る。池には丸々と太った金魚が数匹、おなかを池の底に擦りながら泳いでいる。
 実はこの金魚、六月燈という鹿児島のお祭りの帰りにお店に寄ってくれたお客さんが金魚すくいでもらってきた小さな金魚だった。コンクリートでならした床の上に配置されてい大きめのテーブルは、僕が100本の角材を釘(くぎ)と接着剤で張り合わせてつくった。三角形や変形四角型のテーブルは、それぞれの上に砂漠、森林、資源、岩と植物、草原、氷を象徴するようなオブジェが置かれ、世界の大陸をイメージして作られている。入り口に小さなショップ空間があり、そこに自作の作品や鹿児島の作家の作品を販売するコーナーが設けられている。日常は当時新鮮だったブライアン・イーノの環境音や現代音楽などを流していたが、イベントとしてカフェ空間全体を使って展覧会を行ったり、ライブやトークイベントなどを企画したりして、多くの人に利用してもらっていた。
 青山スパイラルガーデンでの展覧会の搬出をチャンスだと思い、作品が積み込まれたトラックに東京の自宅の家財道具とスタジオとして借りていた場所の作業道具類を全て積み込んで、東京脱出を果たした。鹿児島のイイスペイス2階に事務所を構え、藤浩志企画制作室としての活動の模索を始める。(美術家。挿絵も筆者)=2017年9月1日西日本新聞朝刊に掲載=

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