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【連載】藤浩志 地域と美術のすきまのやもり 49

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藤浩志
2018/01/20
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イメージを公倍数で共有​​​​

 鹿児島県内各地101カ所の地域に子ども達と高齢者がまちを使った遊びを創ってゆく為のプラットホームを、世界中の101人の先鋭的な建築家に小型の文化交流施設として設計してもらう文化館構想を鹿児島市美術館で発表してみた。その文化館のどこかにヤセ犬が潜んでいるという個人的な作品でもある。地方に大型の文化ホールができつつあり、ハコモノ行政と批判されていた頃で、鹿児島県内の様々なホールを使う側の立場でリサーチしたいと考えた。
 鹿児島混声合唱団は結成50周年を迎えるメンバー150人の市民合唱団。当時、高校生から70代が一緒に歌っていて、鹿児島県内のホールで演奏会を行っていた。見学させてもらうつもりがそのまま入団することに。合唱なんて音楽の授業で歌っただけで楽譜なんて読めやしない。MacBookに音楽アプリを入れて楽譜を打ち込み、その音源を聴きながら皆の足を引っ張らないようにと練習に励んだ。
 僕が美術の仕事をしているということで定期演奏会のポスターとチラシを作ることになる。合唱団としては50周年事業でもあるし、鹿児島交響楽団との共演も視野にいれて大掛かりな舞台にしたい。題目はフォーレのレクイエム。鹿児島水害の犠牲者を弔う意味も含めての鎮魂の演奏会。演奏会は2月11日で、その準備の最中の1月17日に阪神淡路大震災が起こってしまった。歌う意味について夜ごと深夜まで論議を重ね、イメージの共有を試みた。
 共同制作をするときの基本だが、公約数を求めようとしてはいけない。皆が遠慮してつまらないところで合わせてしまう。公倍数を求める意識が大切だ。数学だと掛け合わせ、とんでもないところでシンクロすることになる。皆がそれぞれの全く異なる鎮魂をイメージしつつ、できる限りの表現力を駆使し全力で歌う。その瞬間を体験してしまった。僕は精いっぱい歌っているのだが自分の声が聞こえない。全体の声しか聞こえてこないのだ。これが合唱なんだと初めて知り、舞台上で震えていた。 (美術家。挿絵も筆者)=2017年9月6日西日本新聞朝刊に掲載=

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