九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  追悼人間国宝中島宏展によせて 画家 金子 剛さん 荒武者の大成に感動―連載【コラム】

追悼人間国宝中島宏展によせて 画家 金子 剛さん 荒武者の大成に感動―連載【コラム】

2019/05/02 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

1963年、私は新任の美術教員として嬉野商高(現嬉野高)に赴任し、近くの琥山(こざん)窯に出入りするようになりました。窯主の小野琥山さんから、弟子たちに絵を教えてほしいと頼まれたのです。

画家 金子剛さん


当時は娘の小野珀子さんや田中一さん、松尾重利さんなど後に陶芸家として大成する人が集まっていて、絵画や写真、書の若手も一緒に文化グループ「火色会」を設立しました。窯には染織家の鈴田照次さんを中心に人形作家の鹿児島寿蔵さん、古陶磁研究家の小山冨士夫さんのほか、陶芸家の澤田痴陶人さんなどそうそうたる先生方も集まり、私は自分の小さな車で時々運転手も務めていました。
ここに現れたのが「きかん坊の宏」、中島宏さんです。20歳そこそこで人の作品を辛口批評する。怒られると、その辺を蹴っ飛ばして出て行く。でもまた必ずやってきて、珀子さんは「あいが来たら、うっかんがすけん(めちゃくちゃになるから)」と言いながらも世話を焼いていました。
宏さんは若い時分はとにかく荒武者で周りから敬遠されがちでも、大物の先生たちにはかわいがられた。
才能を見抜かれていたのでしょう。白磁の良い作品を出し始めたころから本気になり、中国の古窯視察から帰国した時は風を切るような勢いで、やがて青磁に傾倒していきました。

≪作品紹介≫青瓷釉彩露胎壺(2006年、陽光美術館蔵)。
釉薬を飛散させながら流し掛け、素地の土の表情も見せる。
古武雄のひしゃく掛け技法も思わせる大胆で実験的な作品


今回の追悼展を見て「あの短気だった宏が、こんなに緻密な仕事を」と心から感動しました。彫りの作品は直線の中にゆらめきとリズムがあり、全体の造形と見事な一体感がある。貫入の魅力にも触れ、琥山窯で出会ったころの宏さんの声がよみがえりました。「貫入が入る時の音ば聞いてん。ものすごいよかばい」
アクションペインティング風の掛け流しの作品も素晴らしく、貫入の偶然性の美に通じるものを感じます。(談、聞き手は平原奈央子)

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 070f2343ce

江口寿史展
EGUCHI in ASIA

2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館

Thumb mini 199fb1a74c

挂甲の武人 国宝指定50周年記念/九州国立博物館開館20周年記念/NHK放送100年/朝日新聞西部本社発刊90周年記念
特別展「はにわ」

2025/01/21(火) 〜 2025/05/11(日)
九州国立博物館

Thumb mini e6fdc72059
終了間近

連載15周年突破記念 超!弱虫ペダル展

2024/10/31(木) 〜 2024/11/25(月)
大丸福岡天神店 本館8階催場

Thumb mini cade877eef
終了間近

小田原のどかつなぎプロジェクト2024成果展
小田原のどか 近代を彫刻/超克する
—津奈木・水俣編

2024/09/07(土) 〜 2024/11/24(日)
つなぎ美術館

Thumb mini cbbf457e32

最後の浮世絵師
月岡芳年展

2024/10/26(土) 〜 2024/12/01(日)
九州芸文館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini b617d4aa23
連載記事

追悼人間国宝中島宏展によせて 陶芸家 小川 哲男さん 才能豊かな兄に発奮―連載【コラム】

Thumb mini a4b154eb98
連載記事

追悼人間国宝中島宏展によせて 深川製磁社長 深川 一太さん 話し好きで含羞の人―連載【コラム】

Thumb mini 441ac2deb3
連載記事

追悼人間国宝中島宏展によせて 陶芸家 中村 清吾さん ぎりぎりの線で挑戦―連載【コラム】

Thumb mini 485eee308f
連載記事

追悼人間国宝中島宏展によせて 染織家 鈴田 滋人さん おとこ気で大役全う―連載【コラム】

Thumb mini 0d2b8e896a
コラム

追悼・人間国宝 中島宏展 青磁にかけた挑戦の軌跡 創造の源泉に幅広い交流【コラム】

特集記事をもっと見る