九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  追悼人間国宝中島宏展によせて 染織家 鈴田 滋人さん おとこ気で大役全う―連載【コラム】

追悼人間国宝中島宏展によせて 染織家 鈴田 滋人さん おとこ気で大役全う―連載【コラム】

2019/04/28 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

中島先生とは日本工芸会でご一緒し、父(染織家鈴田照次さん)の代からおつきあいしました。中島先生は先輩作家にもはっきり物を言うので父も手を焼いたようですが、「彼は作品で勝負している」と一目置いていました。

染織家 鈴田滋人さん


私が工芸会に入った頃も先生には近寄りがたい暴れん坊的な雰囲気がありました。遠慮をしていると、父との縁もあったからか何かと声をかけくれました。その後、組織の方針決定はおとこ気がある中島先生が旗振り役に、盟友の十四代酒井田柿右衛門さんが最終決定役になりました。先生がどんどん意見を出しても、柿右衛門先生のひと言があれば変わりました。「そいは、いかんばい」と言われると「ああそうや」と。
2000年代に先生が同会西部支部の幹事長、私が副幹事長に。先生は「マンネリ化はいかん」が口癖でした。あるとき私が中島先生に意見すると「あんたは気楽でよかのお」と言われ、とっさに「先生のような自由人から、なぜそんなことを」と感じたものです。
しかし亡くなられた後にひつぎの中のお顔を拝見して驚きました。見たこともない穏やかな顔。その時気づきました。先生にとって組織の役を務めるのは本意ではなかったかもしれない。あの時「おれも大変なんだよ」と言いたかったのではないかと。本当にお疲れさまでした、との思いがこみ上げてきました。

≪作品紹介≫白磁丸壺(1965~1974年、個人蔵)
乳白色の釉薬がとろりと流れ、下方のしずくが心地いい。
ふっくらした胴に対し口作りは繊細。
中島さんが李朝白磁にも関心を寄せた20~30歳代の作品。


先生は「青磁は人の肌のようなものだよ」と言っていました。血管が透けるような奥行きと生命感。先生の作品は初期の白磁の頃からゆったりした温かみがあり、美しい口縁部の作りにもひかれますし、現代美術家ジャクソン・ポロックのドリッピング技法のような作品も面白い。そして何より、自然を大事にされた心を感じます。 (談、聞き手は平原奈央子)

 

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 3b164c6bd7
終了間近

セレクション展2024

2024/04/06(土) 〜 2024/04/20(土)
EUREKA/エウレカ

Thumb mini e702b48d9f
終了間近

ブルーナ絵本展

2024/03/30(土) 〜 2024/04/21(日)
福岡三越9階「三越ギャラリー」

Thumb mini e794a50fea

北九州市立美術館 開館50周年記念
「足立美術館所蔵 横山大観展」スライドトーク

2024/04/13(土) 〜 2024/05/02(木)
北九州市立美術館 本館

Thumb mini b156a79869

収蔵作品展
センス・オブ・ワンダー

2024/03/12(火) 〜 2024/05/06(月)
都城市立美術館

Thumb mini 5ac71fa77e

春の特別展「カラーズ ~自然の色のふしぎ展~」

2024/03/16(土) 〜 2024/05/06(月)
北九州市立いのちのたび博物館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 0d2b8e896a
コラム

追悼・人間国宝 中島宏展 青磁にかけた挑戦の軌跡 創造の源泉に幅広い交流【コラム】

Thumb mini 21182b5b9c
連載記事

追悼人間国宝中島宏展によせて 元名護屋城博物館長 東中川 忠美さん 古武雄再評価に尽力―連載【コラム】

Thumb mini 3ca7a2592d
連載記事

追悼人間国宝中島宏展によせて 写真家 山崎 信一さん 挑む姿と執念に共鳴―連載【コラム】

Thumb mini 50ea4bc07e
連載記事

追悼人間国宝中島宏展によせて 陶芸家 浦郷 好文さん 「酔陶会」で武雄をけん引―連載【コラム】

Thumb mini 51f7417d29
連載記事

追悼人間国宝中島宏展によせて 写真家 大塚 清吾さん 「陶工」の指先に焦点―連載【コラム】

特集記事をもっと見る