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追悼人間国宝中島宏展によせて 陶芸家 小川 哲男さん 才能豊かな兄に発奮―連載【コラム】

2019/05/01 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

中島宏さんの4歳年上の兄、均さんとは有田工業高の同級生でした。野性的な宏さんに対し、均さんは行動派でテニス部のスポーツマン。そして陶芸の才能にあふれていました。後輩には陶芸家の高鶴元がいて、後に均さんと私も一緒になって若手芸術集団「灼土(しゃくど)会」を結成して切磋琢磨(せっさたくま)しました。

陶芸家 小川哲男さん


均さんは1958年に21歳で日展に初入選し、宏さんは兄の快挙に相当刺激を受けていました。私も発奮して熊本の天草に登り窯を築いて作陶に没頭。東京で公募展があると、均さんと2人で夜行列車に乗って出品に行っていました。
当時中島家の製陶所では均さんが経営と販売を手がけ、宏さんは石炭窯をたいていました。コンポート型の食器を主力に作っていましたが、特に夏場になると有田一帯では売れ行きが伸びません。焼き物で漁業用の網の重りを作り、宏さんが八代海沖の熊本・佐敷の漁村へ売りにいくのにつきあったこともありました。
宏さんはある時から青磁作りを宣言し、中国の郊壇(こうだん)窯の陶片を肌身離さず持ち歩いていました。日本では岡部嶺男さんの青磁が早くから注目され、宏さんも感動して触発されつつ「あれくらいなら大したことなか」と豪語していました。

≪展示紹介≫白磁花器「華」(1981年、個人蔵)
中島さんの兄、均さんの作品。
つぼみがほころんでいくような造形がたおやかで、やや青みがかった乳白色の釉薬をとろりとまとう。


青磁は、ほかの焼き物と比べて「紋付きはかま」のように背筋が伸びる世界です。宏さんが自分の青磁を深めていくころ、均さんは44歳で早世しました。宏さんが「かなわない」と言った唯一の人でした。
2年前に最後の個展に行くと、宏さんは控室で横になっていましたが「今年は(釉薬(ゆうやく)にする)ユス灰がたくさん入った」と次作の構想を語っていました。宏さんは最後まで初心のままで、自分の青磁はいまだ完成していなかったんじゃないかと思うのです。 (談、聞き手は平原奈央子)

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