特別展「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」
2019/11/16(土) 〜 2019/12/22(日)
09:30 〜 17:30
福岡市博物館
2019/12/16 |
現在、福岡市博物館で開催中の特別展「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」(~12/22)の連載をお届けします。(アルトネ編集部)(全4回)
連載最後となる今回は、本展で作品をみることができる絵師たちの素顔を、ちょっとだけご紹介します。
歌川国芳(うたがわ くによし)
寛政9年(1797)〜文久元年(1861)
幕末の浮世絵界を席巻した巨匠であり、本展の枢軸を担う大親分です。
画面から飛び出てくるような、迫力ある武者絵で一世を風靡しました。
また3枚続きの画面を活かす、大胆な構図も持ち味です。
実は猫好きという、意外と可愛い一面も、最近は有名ですね。
なんと懐に猫を抱き、周囲にも数匹遊ばせながら、絵を描いていたのだとか。
会場では、猫や弟子たちで大賑わいだった国芳の仕事場のようすにも、ご注目ください。
国芳は親分肌で多くの弟子を抱えていたとされますが、残された絵をみると、むしろ腕白少年のようでもあります。
例えば、好奇心旺盛で新しいものをどんどん取り入れ、西洋画でも流行の見世物でも、いちはやく研究しては色々なところで試しに描いてみる。あるいは、規制スレスレのきわどい諷刺を、遊び心たっぷりに表現してのける。
きっと人を驚かせたり、喜ばせるのが好きな人だったのでしょう。同時代の庶民も、「おっ、今度はこうきたか!」「またやってくれたな!」なーんて、わくわくしながら国芳の痛快な挑戦を一緒に楽しんでいたのではないでしょうか。
型破りな作品の数々は、必見です!
月岡芳年(つきおか よしとし)
天保10年(1839)〜明治25年(1892)
歌川国芳晩年の弟子にして、最後の浮世絵師と呼ばれる鬼才です。
これまで3回にわたってその凄惨な作品をご紹介してきましたが、これだけは、言わせて下さい。
芳年は、無残絵だけの絵師ではありません!!
むしろ、一説には1万点にも及ぶとされる芳年作品のなかで、凄惨な血みどろ絵はわずか120点程度しかありません。これらは、約40年間という彼の絵師人生のうち、若年期の4年間に描かれたものなのです。割合としていかに僅かであるかわかります。
会場では、無残絵以外の芳年作品の魅力もたっぷりご紹介します。
例えば、いきいきとした美人図。
あるいは、緻密な研究に基づく歴史画。
そのほか国芳の’奇想’を受け継ぐ大胆な絵や、西洋画のエッセンスを取り入れた瀟洒な絵など、これまでの芳年観がひっくり返ることうけあいです。
また、国芳の作風を色濃く受け継いでいた芳年が、年月とともに師風を打ち破り、近代的な冷静さでもって画面を洗練させてゆくさまにも、ご注目ください。
国芳の迫力を「足し算」とすれば、芳年の凄味は「引き算」だといえるかもしれませんね。
ちなみに芳年先生、実は涙もろい人だったそうですよ。
落合芳幾(おちあい よしいく)
天保4年(1833)〜明治37年(1904)
月岡芳年の兄弟子にして最大のライバルです。
連載前半にご紹介した「英名二十八衆句」を、芳年と合作したことでも知られます。
明治に至ると、新聞挿絵という新しいジャンルで活躍しました。
残された血みどろ絵からは想像できませんが、芳幾は「洒落幾」とあだ名されるほど、いつも洒落や冗句を繰りだしていたそうです。
頭の回転が速く、何事にも器用な人だったのでしょう。(うらやましい!)
歌川芳艶(うたがわ よしつや)
文政5年(1822)〜慶応2年(1866)
強い筆使いと艶麗な彩色で、国芳から「芳艶」の号を与えられた絵師です。
展示室に並ぶ3点の作品は、どれも国芳を凌ぐど迫力!
ただ…一時期、ちょっと賭博にはまりすぎたという噂も。なんだか人間くさいエピソードです。
歌川芳房(うたがわ よしふさ)
天保8年(1837)〜万延元年(1860)
才能ある絵師ながら、24歳の若さで、師・国芳に先立ってしまいます。
会場に展示されているのは1点だけですが、力強く臨場感に溢れており、この作品だけでも、十二分に夭折が惜しまれます。
長生き、せねばなりませんね。
おわりに
型破りな巨匠・歌川国芳の下で育ち、その強烈なDNAを受け継いだ「芳」の系譜の絵師たち。彼らの素顔をほんの少しご紹介しましたが、なんせ国芳親分、50人以上も弟子を抱えており、ここでは取り上げきれなかった絵師たちが他にもまだまだ会場に控えています。
展覧会も残すところ、あと一週間。
ぜひ彼らと、その作品に、会いにきてください。
幕末明治の激動する時代に挑み、新たな表現に挑み続けた彼らの作品は、現代を生きる私たちにとっても、きっと刺激的で、示唆に富んでいるはずです。
令和元年、挑む浮世絵を見納めてよし!
「芳」の系譜で、おわりよし!
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