九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  コラム ›  絵に宿る風土 大地の力展③ 呼び覚ます触感

絵に宿る風土 大地の力展③ 呼び覚ます触感

2021/11/20 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 前衛美術集団九州派の一員でもあった田部光子。代表作の一つ「人工胎盤」など、常に社会問題や身体感覚を鋭く問い直す作品を手掛けてきた。

田部光子「魚族の怒り」(1959年、福岡市美術館蔵)

 後の著作で<その頃のわたしは、水俣病とは直接関係しなかったが、「魚族の怒り」シリーズを「予見」するかのように発表し始めていた>と時代との符合を振り返った本作は、ぬらりと光るうろこを汚すように、アスファルトをまとった黒い異物がちりばめられている。「青木繁以来の神話性の系譜も加味されている」と担当の佐々木奈美子学芸員。ごつごつとした画肌が、見る者の心をざわつかせる。

 工芸学校で蒔絵(まきえ)の技術を学びながら、油彩に転向した宇治山哲平。巧妙に配置された図形は、くるくると回るこまや張り子人形を想起させる。画面を凝視すると、そこには砂絵のように、びっしりと粒子が塗り込められていることに気付く。

宇治山哲平「童」(1972年、大分県立美術館蔵)

 もちろん、直接触れることはできないが、地面を指でなぞって絵を描いた童心を呼び覚まされる。「背景の白さは、故郷日田の深い霧を思わせる」。佐々木学芸員は指摘する。

(担当:大矢和世)

****

 久留米市美術館で、開館5周年記念展「九州洋画Ⅱ 大地の力 Black Spirytus」(西日本新聞社など主催)が開かれている。12月12日まで。「九州ゆかりの近代洋画」を軸にコレクションを構築する同館。特に風土を反映した力強い表現に光を当てる企画展だ。黒田清輝、坂本繁二郎といった巨匠から気鋭の若手まで幅広い作品78点が並ぶ。筆跡に宿った迫力の一端を届けたい。

=(11月18日付西日本新聞朝刊筑後版に掲載)=

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 070f2343ce

江口寿史展
EGUCHI in ASIA

2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館

Thumb mini 199fb1a74c

挂甲の武人 国宝指定50周年記念/九州国立博物館開館20周年記念/NHK放送100年/朝日新聞西部本社発刊90周年記念
特別展「はにわ」

2025/01/21(火) 〜 2025/05/11(日)
九州国立博物館

Thumb mini e6fdc72059
終了間近

連載15周年突破記念 超!弱虫ペダル展

2024/10/31(木) 〜 2024/11/25(月)
大丸福岡天神店 本館8階催場

Thumb mini cade877eef
終了間近

小田原のどかつなぎプロジェクト2024成果展
小田原のどか 近代を彫刻/超克する
—津奈木・水俣編

2024/09/07(土) 〜 2024/11/24(日)
つなぎ美術館

Thumb mini cbbf457e32

最後の浮世絵師
月岡芳年展

2024/10/26(土) 〜 2024/12/01(日)
九州芸文館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 26d0a8284f
コラム

絵に宿る風土 大地の力展② 追憶のヤマ追い求め

Thumb mini afaf29409f
コラム

絵に宿る風土 大地の力展① 揺るぎない眼裏の光

Thumb mini 93100dd95b
連載記事

「九州洋画Ⅱ:大地の力」展に寄せて【学芸員コラム】 第3回「パリの画学生」

Thumb mini 18a8754432
連載記事

「九州洋画Ⅱ:大地の力」展に寄せて【学芸員コラム】 第2回「坂本繁二郎、決別の3枚」

Thumb mini a3151a4eba
連載記事

「九州洋画Ⅱ:大地の力」展に寄せて【学芸員コラム】 第1回「菜の花の記憶」

特集記事をもっと見る